いつの間にか眠ってしまっていたよう。
机の上にはたくさんのボツになった手紙たち。
便箋をすべて使い切ってしまったけどどうにか完成することができた。
時計は朝の6時20分。
いつもの学校へ行くときの起床時間と同じだ。
果たして、本当にあと12時間もせずに地球は終わってしまうのだろうか。
昇りかけの太陽だって、スズメのさえずりだって、キッチンから聞こえる音だって、いつもと一緒なのに。何一つ変わらないのに。
嘘であってほしい。
汚いものばかりのどうしようもない世界だけど、その中にもきれいなものはあって。
懸命に生きている人がいる。
今日終わってしまうのは惜しいよ。
「美優ー起きなさーい!学校でしょうー?」
ううん、そんなことを今さら思ったってしょうがない。
私はパチンと頬を叩いて眠気を覚ました。
よし。
「今行くー!」
朝の日差しが部屋中に差し込む。
暖かい光。
これが私たちの生きている世界。
今日、終わってしまうかもしれない世界。
夢じゃない。まぎれもない現実。
だって、さっき叩いた頬がヒリヒリしてるから。
今となってはそんな痛みさえも愛おしく思えてくるのだった。



