二度目の人生でかつての戦友が私を溺愛する



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いよいよ出陣の時。
お父様の率いる私たちの大隊は、中央の位置に配置され、ロイ小隊はその右翼に組み込まれた。

「ハナ、大丈夫か?」
「テッド…」
私は首を振る。

「怖いわ」
「そうだな、俺も怖い。
でも生きて家族のもとに戻ろう。」
テッドは懐から1枚の紙を取り出してキスをした。
家族の写真だ。

私も祈り文をしまっている胸元に手のひらを重ね、
深呼吸をした。

戦功を上げてみせる!
そして、私の祈りを…叶えて…
「…」
「ハナ」
ロイが小隊の前方から馬を降りて歩いてきた。

「そろそろ号令がかかる。
準備するよう皆に伝えてくれ。」
「了解」
「…あと、聞きたいことがある。」
「ん?」
「祈り文…あれになんて書いたんだ?」

私は再び胸元に手を当てる。
我ながら自嘲気味な笑顔を浮かべた。

「…幸せなリンとギル様のとなりで私も幸せになりたい、と。」
「ハハッお前はバカだな」
「何よー!…じゃあロイは?」
「…」

ロイの淡い青色の瞳が私の瞳を覗き込む。
心が洗われるような色だと常々思っていた。

「俺の願いは『戦争に勝ちたい』だ。」

そうまっすぐな声で言いきる姿は
友達のロイではなく、隊長のロイだった。

「ええ、本当にそうね。」
「ハナ、武運を祈る」
「武運を祈るわ」

ロイが先頭に戻っていき、間もなく大きな笛の音が鳴り響いた。
遠くで兵を鼓舞するお父様の声がわずかに聞こえる。

「出陣ーー!!」
前方の砂煙が徐々に自分達に迫り来る。
ゴクリと唾を何度も飲んだ。

「ロイ小隊、出陣!!」
「「オオオーーー!!」」

そうして私は戦場に出た。


序盤は侵略される側のアイダの方が士気が高く、形勢は有利だった。
私は最初の勢いの中で、コロニスの小隊長を討つことができた。
欲しかった戦功だ。
それでも斬っても斬っても減らないコロニス兵に
つかの間の喜びはすぐに薄れていく。

初めて人を殺した。
そのことに考えを巡らせる隙もなく、また殺した。

わかっていたのに、私の中の大事な何かはもうなくなってしまった。
同じ人間に対する…仲間意識みたいなもの?
共食いする虫を見たときに感じた不快感を、自分自身に感じていた。
それでも走って剣を振るい続けた。

しかし、徐々に兵力の差でコロニスに押されていく。