ハナお嬢様と子爵がいなくなり、屋敷は日々重苦しい雰囲気に包まれていた。
しかし俺とリンネットはひたすらに魔術書を読み漁っていた。
リンネットは戦争に有利になる魔術を探していたと思う。
次第にすらすらと古代語も読めるようになり、解読のスピードは増した。
「セロン先生!簡易的な防護結界の魔術が成功しました!」
「さすがです、リンネット」
「この魔術詞はきれいな讃美歌のようでした。」
リンネットが使える簡易的な魔術も、
俺には一切使えなかった。
古代語は読める。
この文字はAを表しているから…と、理論的に。
しかしリンネットは違うようだった。
魔術詞を言語として捉え、そこに宿るニュアンスや感情も理解している。
古代語とは言え母国語であるから、遺伝子で理解しているのか?
俺も長くアイダで暮らせばいつか理解する時が来るのではないか…
いつか…アイダの魔術に対価の理論を加えれば、歴史上随一の強力な魔術を生み出せる!
俺は数週間のうちに禁書を読み尽くし、さらにアイダの文学、歴史、宗教、小説、様々な本を読み漁った。
そして、追加で届いた禁書の中で俺たちの運命を大きく変える魔術に出会った。
未来視の魔術だった。



