二度目の人生でかつての戦友が私を溺愛する



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王都には何度か来たことがあるが、
その様子は驚くほど様変わりしていた。

武器を持つ人が圧倒的に増えている。
出兵のために来た一般階級の市民だ。
貴族だけでなく、市民ももちろん戦地に赴く。

戦の勝敗を分ける要素は2つあると言われていて、1つは指揮官の腕、もう1つは数だ。
兵は多ければ多いほど良い。

若い男は義務で、老人と女も希望すれば戦に出られる。
お金が必要な人、夫や息子とともに戦いたい人、理由は様々。
私が今から向かう訓練所は戦で最低限戦えるように
兵たちを鍛えるための場所だ。

馬車がつき、ようやく長旅から解放される。
少ない荷物を持ち、御者に別れを告げ、訓練所に入った。

思っていたよりきれいな建物だわ…。
キョロキョロしていると、声をかけられた。

「女、新入りか?」
「え、私?」

「女」などと呼び掛けられたことがなく戸惑ってしまう。

「そうだよ。見たところ金持ちの家のお嬢様か?」
「え、えっと…そうかしら…」

その男はふーんと言い、私を見る。

「こっちへ来い。教官のところへ案内してやる。」
「あ、ありがとう…」

その男のあとについて行くと、開けた広場に出た。
何百人もの人が剣の素振りや、模擬刀での試合をしている。
ピリピリとした緊張感に全員の本気度が伝わる。
そうだ、みんな命を懸けてここに来ているんだわ…。

「お前、名は?」

周りの景色に圧倒されていると、上から声がふってきた。
見上げて驚く。

きれいな金髪、淡い青色の瞳、がっしりした身体、
何よりとてつもなく整った顔立ち。

何!?この方は…
絵本に出てくる王子様のようだわ!

「なんだ?」
「い、いえ…」
「この女、どこぞのお嬢様らしいぞ。ロイ。」
「お嬢様?」

私は気を取り直して敬礼をする。

「セレスティーナ子爵家長女、ハナ・セレスティーナと申します。
ノブレス・オブリージュにのっとり、アイダ王国を守るべく参りました。
どうぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」
「子爵!?」
私を連れてきた男は慌てた様子を見せる。

「俺はロイ・クリゾンテム。
悪いが貴族でも気は遣わねぇから。
イヤなら他の小隊に…「構いませんわ。」

変な気遣いはない方がいいわ。
この方が教官ということは、この訓練所の責任者の1人。
そして3か月後に私が入る小隊の隊長となる方だ。
この方から学び、強くなって、私は生きて帰る…。

「そうか。とりあえずスカートから着替えてこい。
兵士の気が散る。
それと髪はくくれ。それか切れ。視界が悪いし敵に掴まれる。」
「はい…」
「敬語はいらねぇ。」
「わ、わかった…」
「行け」

キビキビした方だわ。
剣士とは皆さんこうなのかしら。
私も慣れなくては…

その日から私の剣士としての日々が本格的に始まった。