「うぅ、ハナァ!!」
治療中、泣きながら心配するリンを見て改めて申し訳なくなった。
「っごめんなさい、夢中になっちゃったの」
「切り傷を作るなんて聞いてないわ!
こんなことなら絶対出場を止めたのに!」
「普通ならアザくらいで済む大会だったのよ。
自業自得なの、許して?」
リンは恨みがましく私を睨むと、
「もう!!」
と半分怒りながら諦めてくれた。
治療を終え、体育館に戻ると、試合を行っているフィールドはずいぶん少なくなっていた。
上位選手に絞られてきたのだ。
リンについていき観客席の一角に座る。
「ハナ、すごくかっこよかったよ!」
「サラ、ありがとう!」
「本当にな、ティボー先輩と渡り合うなんて1年の星だよ。」
「ギル様まで…。」
みんなの優しさがむずがゆいわ…。
ティボー様との試合終盤の野蛮な姿に幻滅されなくてよかった。
私がひと安心したところで会場のアナウンスが聞こえた。
「まもなく決勝戦を開始します」
「決勝戦…ロイは…?」
「それなら…「やぁハナちゃん」
後ろから声をかけられ振り返ると、セロン様が苦笑いを浮かべていた。
「セロン様、試合は…?」
「準決勝で負けたよ。君の相棒にね。」
「ロイに…!?」
そしたら、魔術を織り込んだ剣術に勝ったということだわ!
「そんな嬉しそうにしないでくれ。」
「そ、そんなことは…」
「正直魔術を唱える間もなくやられたんだ。」
「え…」
「彼を見くびっていた。」
会場のざわめきが増したので、フィールドの方を見ると、ロイとティボー様が見えた。
「決勝はあの2人だよ。」
「…」
ロイ…
2人がフィールドに入ると、周囲から拍手が起こった。
会場は試合開始を待ちわびる空気に包まれている。
フィールドでは、姿勢よく柄に手を添えるティボー様と、ポケットに手を突っ込んで立つロイが向かい合っている。
拍手がやみ、少しの沈黙のあと
「始め!!」
審判の手が振り下ろされた。



