二度目の人生でかつての戦友が私を溺愛する



気を取り直して…
2人の様子を探らないと!

「そう言えば、リンとギル様は2年生から経営科、剣術科、魔術科、淑女科どのコースを志望してるの?」
「俺は経営科だよ。
剣術はあまり得意ではないし、魔術は適性次第だけど、父の事業を継ぐという目標には経営科の方がいいな。」
「私はまだ決まってない…。淑女科かな。
適性があれば魔術科がおもしろそうだけど…」
「魔術科の実習があるのはまだ先だものね。」

魔術の授業は入学してしばらくは座学のみである。
適性の有無が重要なコースであるため、ギル様のように今時点で魔術科以外の志望科が決まっている生徒の方が少ない。
それほど魔術の適性は貴重で、将来性がある。

「じゃあ試してみるか?」
ロイが胡散臭い笑顔でそう言った。

「試すって?」
「魔術の適性だ。」
「でももし適性があって魔術が暴走したら危ないよ…。」
リンが不安そうに言った。

「安全に分かる技術がある。
王立図書館のVIPルームで見つけた。」
「どうやるの?」
私はそう尋ねると、ギル様とリンの表情に注目した。

「昔戦争で滅んだアイダという国の技術だ」

「ああ、たしか50年くらい前にコロニス統治下になった…」
ギル様が言う。

「本当に安全なの…?」
リンが尋ねる。

2人の表情、声色、仕草、瞳の動きまで見ていたが、
一切淀むことはなかった。
前世で使った尋問のとき動揺を測るテクニックだ。

やはり…2人とも記憶がない。

私がロイに目で合図すると、
「悪い!本は持ち出し禁止なんだ!
今度図書館に行ったとき記憶してくる。」
そう言って、この話題を終わらせた。

やはり今世の2人を探るよりも、魔術の研究と残された記録から真実を探る方が確実だわ。
リンの記憶がないことへの安心感と、今後の動き方が見えてきたことへの意欲が胸を満たしていた。


他愛ない話が続いていると、ふとギル様が新たな話題を出した。
「そう言えば、2ヶ月後の新入生歓迎パーティーのことは聞いた?」

その話題にリンが真っ先に反応する。
「ええ!貴族の方々の社交パーティーのような催しなんでしょ?
憧れていたのよね…。」

「あんなの退屈なだけだ。」
ロイの予想通りの反応。

「私もあまり気乗りしないわ。
社交的な場は苦手だし…」
前世でも社交パーティーは苦手だった。

「2人とも冷めてるわね。
でも基本的に参加必須だから、色々準備を進めないと!」
「そうね。ドレスも買わないといけないし、ダンスの練習もしないと…」
「生徒の大半が平民だし、そこまでかしこまったパーティーではないらしいよ。
男女パートナーでなくてもいいようだし。
ロイは社交パーティーは慣れっこか?」
「いや、必要最低限しか参加していない。
婚約者候補のパートナー役とかな。」
「そうか、でもロイにダンスを教わるのが一番早そうだ。」

私はティーカップを机に置く。

「ちょっと待って?ロイ、婚約者がいるの?」
「婚約者候補だ」

一瞬カッとなるが、すぐに冷静になる。
伯爵家の次男だもの。当然ね。

当然よ…

「えっ、婚約者候補って、どなたなの?
いつ決定するの!?」
リンが思うままに不躾な質問を投げかける。
でも私も気になる…。

「2年生のアシュリー・フォンティーヌ子爵令嬢。
魔術科だ。婚約は…どうなるかわかんねぇな。」
「魔術科!?すごい…!」
「新入生歓迎パーティーには上級生も任意で参加できるらしいけど、アシュリー様は出席されるのか?」
「ああ」
「じゃあその時会えるな。」

私はただ作り笑顔で話を聞いていることしかできなかった。