ーー翌日の放課後
リンに連れられ、私とロイは学内のカフェテリアに向かった。
「ハナはカフェテリアに来るのは初めて?」
「ええ、リンはよくお友達とお茶してるわね。」
「入学して1週間、すでに御用達よ!」
「ふふ…」
食堂とは違う落ち着いた雰囲気。
通いたくなる気持ちもわかるわ…
ティーセットが準備されたテーブルで、すでにギル様が待っていた。
「ギル様、お待たせ!
ティーセットの準備をありがとう。」
リンが明るく手を振りながら駆け寄る。
「とんでもない。
最近うちで取り扱うようになった外国のお茶を持ってきたんだ。
是非感想を聞かせてくれ。」
「楽しみだわ!」
ギル様のお茶を注ぐ姿に思わず見とれてしまう。
挨拶が遅れたことにハッとする。
「ごきげんよう、ギル様」
「ごきげんよう、ハナ。
ロイを誘ってくれてありがとう。
ロイも。伯爵家でも珍しいお茶の品種だから楽しんで。」
「ああ」
ロイは私とリンの椅子を引き、エスコートした。
本当に、ロイの貴族らしい振る舞いには慣れないわ。
前世だったら真っ先に自分の椅子を引いて、どっかり座っていたわね。
男性2人も椅子に座り、4人でテーブルを囲んだ。
「ではいただきます。」
3人同時にギル様が入れてくれたお茶を口に運ぶ。
「美味しい!」
「ええ、優しい味ね。」
「そうか、よかった!ロイは?」
「華やかな香りだ。いい茶葉だな。」
「フフッ」
音を立てずにティーカップからお茶を飲むロイの姿に思わず笑いがこぼれる。
「なんだよ、ハナ」
「なんでもない…」
「ハナはビールジョッキの方がよかったんじゃないか?」
「なっ、失礼な!」
ギル様とリンがキョトンとした顔をしていることに気づき、慌てて口をつぐむ。
ロイにからかわれてはしたない会話をしてしまった。
前世と同じ失敗を…!
「ハナ、ビールが好きだったの?」
やめてよ、リン!
「違うわ!ロイがからかっただけよ。」
ロイは笑いを必死にこらえている。
「ビールを持ってくるのは難しいが、今度ロンド家に伺う際はワインを持っていこう。」
「ギル様まで、真に受けないで!」
3人の笑い声がテーブルを包んだ。
恥ずかしい…
だけど平和だわ…。
またこの4人で、こんな穏やかなティータイムを過ごせるなんて…
私の笑い声も加わり、穏やかな時間が流れた。



