二度目の人生でかつての戦友が私を溺愛する



入学翌日から学園の授業が始まった。
科目は文学、数学、歴史、科学、経営学、魔術学、体育の7つ。
前世の知識でも知り得ない学びが初日からあった。

コロニスの文化がアイダより進んでいるのか、
50年の歳月が私の知らない知識を産んだのか、
わからないけれど、とにかく授業は楽しかった。

ただ、隣の席のロイがことあるごとに私に絡んでくるのは不可解だ。

整った顔立ち、男性らしいたくましい身体、伯爵家という身分ーー
クラスの女子生徒から熱い視線を受けるこの人から、嘘くさい口説き文句を言われる身にもなってほしい。

今だって…

「今日は髪を下ろしてるのか。」
「え、ええ…」
「綺麗な髪だ。」
「あっ、ありがとう…ございます…」

前世では戦闘に邪魔だから切れと言ったくせに!
心の中で文句を言っても声には出せない。
ベタな褒め台詞にもいちいち顔を赤くしてしまう。
悔しい…っ

しかもロイは私以外にはそっけない態度をとる。
おかげさまでクラスの女子にはあまり好かれていないようで、入学から数日たった今も友人ができていない。

いや、ロイのせいだけじゃないけれど…
もともと人付き合いが苦手な私にも原因があるわ。
きっとリンなら同じ立場でもうまくやるもの。

何とかしたいとは思いつつも、なんだかんだリンやギル様が話し相手としていてくれるから、臆病な私は行動できずにいた。


「ハナ!更衣室に行こう!」
「うん…」

次の授業は初めての体育だ。
この学園は、2年生になると、適性ごとに経営科・剣術科・魔術科・淑女科の4コースに別れる。
体育は剣術科の適性を測る科目だ。

今世は剣を持ったことも、激しい運動をしたこともない。
また前世のように剣の才能があるのかしら?
そういえば、前世の私の愛剣はどうなったんだろう…
「ハナー!早く!」

ボーッと考えごとをしていたら、リンは廊下のずいぶん先まで行ってしまっていた。

「今行くわ!」

今は余計なことを考えるのはやめよう。
私はリンのあとを追って走り出した。