○教室 休み時間

レイナ「何かやったの?」

夜を問い詰めるレイナ。

夜「……少し、力を解放しただけだ。」

レイナ「力の解放ってなに?!昨日言ってた、サイレント・デスソース?みたいなやつ?それは具体的に一体何?」

夜「いくらレイナでも、俺は闇に生きる漆黒の騎士、詳しく話すことは出来ない。あと、静壊(サイレント・デストラクション)だ!」

レイナ「私に仕える騎士なら私に全部話しなさいよ!」

夜「え、レイナ、俺のこと、騎士って、改めて、認めて、くれた……?」

キラキラした瞳でレイナの手を両手で握り、彼女を見つめる夜。

レイナ「言葉のあやよ!論点をずらさないで。」

レイナは少し頬を赤らめながら、なんとか手を振りほどき、夜の頬を両手で挟む。次は夜が頬を赤らめながら、唇をとがらせて言う。

夜「レイナに近付いたから、ちょっと釘さしただけ。そしたら、ヤツが思った以上にビビっちゃって、気付いたら辞めてた。」

レイナM「私が本気で聞いている時はそれを察して、中二病口調を解除して、真面目に話す。この男はしっかりと弁えているのだ。だから尚更タチが悪い。」

レイナ「あの先生、そんなに距離近かった?」

夜「近いよ。あれは超危険。」

レイナ「……そう。護ってくれたことはありがとう。でも、辞めさせるまで一体何を……」

夜「それは……ッッ!これは禁言の術、だとッ?
 すまないレイナ、この呪いを解除する方法を探してくる。」

爆速でレイナの前から姿を消す夜。

レイナ「あ、逃げた。」
 
レイナ(これは有耶無耶にしちゃおう作戦ね。これを使う時の夜は、絶対に話してくれない。一体何をしでかしたのやら……)

○学校 廊下 休み時間
お手洗い帰りのレイナ。
夜は呪い解除のためにどこかへ行ってしまったため1人行動中。

そこに、以前レイナを助けてくれた男子生徒が声をかけてきた。

男子生徒「あ、キミ〜!」

レイナ「先日はどうもありがとうございました。」

男子生徒「気にしないで、レイナちゃん。」

レイナ「え、なんで私の名前を?」

男子生徒「そりゃあ、だって、レイナちゃんは有名人だし。」

レイナ「えっ」

男子生徒「自覚ナシなの?本当おもしろいね。」

男子生徒「僕は瀬尾優希(せおゆうき)。高2だよ。」

レイナ「改めまして、西園レイナ、です。」

優希「うん、よろしく!同い年だしタメ口でいこーよ。」

レイナ「う、うん!」

優希のキラキラの笑顔に、レイナの心も温まる。

優希「1年の頃に僕も部活を見学してて、部活見学を物陰から見学してるキミを見て頭から離れなくって。」

レイナ(なかなか見学する勇気が出なくて、隠れて見学を見学していたことがバレていたなんて恥ずかしい!)

レイナは慌てて顔を隠す。

優希「恥ずかしいことじゃない。やっぱ、女の子だと抵抗はあると思うし、なかなか勇気が出ないとは思うから。でもあの時キミはしっかり見てた。だから、僕は気づけたし。」

レイナは覆っていた手を離し、優希の方を見る。

優希「まあ、キミを取り巻く環境的に色々難しいんだろうとは思うけど、僕、あの時のキミの瞳、好きだよ。」

レイナ「……!」

優希の甘く優しい言葉にレイナの体温はは熱くなる。

その時だった。

夜「待たせたな、レイナ!色々な解呪方法を探したのだが、残念なことにこの禁言の術は一生解けないものらしく……」

夜「誰?」

鋭い眼光を優希に向ける夜。
レイナはアタフタしながら彼を紹介しようとする。

レイナ「あぁ、彼は……」

優希「おっと、キミの騎士様が来たみたいだ。じゃ、僕はいつでも大歓迎だから。」

レイナ「うん!」

優希は去っていく。

夜「んで、ヤツは?」

レイナ「彼は瀬尾くん。同い年なんだって。」

夜「で、何を話してた?」

○(レイナの回想)
レイナの自宅

レイナ「私、部活に入りたい!」

夜「ダメだ。組織が関連している可能性がある。」

レイナ「だから組織って何……?」

夜「それはッッ……すまない。禁言の呪いで言えない。」

レイナ「何それ。いいじゃん部活くらい!そうだ、夜も一緒に入部しよ!」

夜「だからダメだって言ってるだろ!学校に行けているだけでも奇跡なのに、さらに部活なんて、俺は女王様(レイナ)を更なる危険に落としたくないんだ!」

レイナの前で声を荒らげることなどない夜が、大きな声で放った言葉。
レイナには感じ取れてしまった。これが本心なのだと。
夜の心からの願いなのだと。

○(レイナの回想終了)

レイナ「……ただ、私と夜は学校の有名人だって話してくれただけ。」

夜「本当か。」

レイナ「ええ。」

○学校終わり 二人の家の前
 レイナと夜は同じアパートの隣同士に住んでいる。
 彼らの部屋は3階。

レイナ「じゃあ、また明日。」

夜「ああ。気を付けてな。」

中二病ではない素のトーンと笑顔。
レイナは夜の変化にドキリとする。

レイナはすぐいつもの調子を取り戻す。

レイナ「って、隣じゃん。でも、ありがと。」

○夜視点
 レイナを見送ったあと
 夜は3階からひょいと飛び降りて、綺麗な着地を決める。
 夜の前には5人の黒ずくめの男たちがいた。

夜「はぁ、あのさ。いい加減ストーカーはやめてくんないかな!」

 あっという間に5人を素手で倒す夜。

 夜はポケットに入っていた、イヤホンを着ける。

夜「こちら、サキサカ。組織の工作員を排除し、レイナ(クイーン)を無事送り届けました。」

謎の声「了解した。担任の件もある。学校内ではより厳重にレイナ(クイーン)の警護するように。」

夜「もちろん。」

○夜の部屋
夜(組織からの刺客が来ることは予測していたが、まさか担任に変装しているとはーーー)

○夜の1日前の回想
夜M(杉野、とか言ったかあの怪しい担任。
ヤツに指示された仕事は秒で終わらして、窓ガラスを破って最短距離でレイナのいる準備室に来てみれば。

レイナに徐々に近付く杉野が目にうつり、俺はすぐにこう言った。)

夜「レイナ。先に教室に戻っていてくれ。」

夜「クッ!我が女王様(クイーン)よ。ここは俺に任せて先に行けっ!」

夜M(レイナのことだ。このセリフを言えば俺の中二病ノリにつきあってくれるだろう。)

レイナ「え?うん。分かった。」

レイナが去ったのを確認したあと、夜はネクタイを弛めてこう言った。

夜「さて、話をしようか、ゲス野郎。」