Mutter

「実は、今日見ちゃったんだ」
えっ心の中の鈴木福君、何？
「君のお母さん多分、ギャルなんだと思うよ
それから昔ちょっぴりモデルをやっていたらしい」
それで父ちゃんと縁があったの？
「厳密に言うとちょっと違う。君とお父さんの出会いは複雑で、何ていうか
お母さんは記憶喪失に近い。でも健在だよ。あの目は、君の事忘れてる。ごめんね本当に」
お母さんに、会ったの？
「会った…んだと思う。君のお母さんは、自分を罪深い人間だと思っているんだけどね。僕らに似た年代の子供を妊娠して、なんだか産む事が出来なかったっていうか…いつの間にか消えちゃった。みたいに思ってる。それにその事なんだと思うけど、ショックで気が狂っちゃったらしくて、心の病気もあるみたい。一見、目立たないんだけど」
どんな人だった？
「顔は谷花音ちゃんとかちょっと似てたかな。どっちかっていうと猫。」
他には？
「年齢は恐らく30代？　もっとよく見ればよかったかな」
どこで会ったの？
「うーん。それが不思議な事に、僕の芸能事務所っていうか。」
えっ
「うーんレッスン生をやっているんだと思うよ。今日は友人の発表を見に来た。みたいなシュチュエーション。」
うん僕、頑張るよ

その夜
久々にお母さんが夢に出て来た

「ねえお母さん、僕の事忘れてるって本当？」
「大陸…ああ、あの時の子だったんだ。大陸が生きていてくれて嬉しい」
「うわーん」
「ごめん。ごめんね。」
「ひっく、ひっく。」

夢の中のお母さんは、何だか若くて、いい匂いがして、やわらかくて、ずっと一緒にいたかった

目が覚めたら、涙が出ていた



拝啓

お母さんへ

元気ですか？
ご飯食べていますか？

ばあちゃんは、
お母さんが良く感じるのは、いつも一緒にいないからだと言います
そうだとしても、お母さんの事は、やっぱり大好きです。
僕は映画の撮影を頑張っています

父ちゃんも元気だよ一応

えっ会いたく無い？　父ちゃんに
うーん困ったな

ばあちゃん
父ちゃん
お母さん
僕
夢なんだ
そう
夢

僕
そう
僕

頑張るね！