推しが尊い

その後は何故か、蓮君もあまり話さなくなってしまった。
やはり、キモかったのだろうか。
顔が赤かったのも幻覚なのだろうかと頭の中ではぐるぐるぐるぐる思考が負のループを描いていた。
そもそも、蓮君が自分相手に顔を赤くするなんてあり得ない話だ。
(危なっ!勘違いしそうになってた!私はファン!ファン!)
負のループから抜け出しすとお会計が済まされており、蓮君にグッズが入った袋を渡される。
「はい、みこちゃんの分」
「え?!あ!ご、ごめんなさい!私ったらお、おお金!」
慌てて鞄からお財布を取り出すも蓮君の手により制される。
「いいの、今日は俺のわがままで付き合ってもらったんだから」
「いえ!だめです!ちゃんと払います!」
そうだ、推しに貢いでも良いが貢がれてはいけない。
何の決まりかはわからないが、自分の魂が確かに今そう語っている。
「じゃあ、お金は良いからまた俺と出かけてくれる?」
首を傾げたあざとポーズに心の臓を射抜かれる。
蓮君のあざとポーズなんてレア中のレアだ。
いやだが、しかしこれ以上はアイドルとファン。境界線をつけなければ。
「あ、ごめん。次の仕事があるから行くね!また、連絡するね!」
満面の笑みで走り去る推し。
眼福だ。
「じゃなくて!」
と言葉にした時には蓮君の姿はとうに無く、一人取り残されていた。
そして、今冷静になって違和感を覚える。
「蓮君ってあんなにニコニコ笑うんだ‥」
その違和感を拭いきれずに一人取り残され考えたのだった。