推しが尊い

そこに立っていたのは、推しの蓮くんだった。
(え?なんで?いや、夢か?夢だ)
頬を思いっきり叩いて見たが見事に痛い。
つまり、夢じゃない。
推しがこちらに駆け寄ってくる姿に足が地面と一体化した私は動けずそれをただ見ているしかできず、気づけば距離は数センチ。
「よかった、着いたって連絡入れようと思ってたところ」
「え?えぇっと、人違いじゃ‥?」
そうだ。きっと人違いをされてるんだ。
初めての生推しがこんな数センチ距離なんてありえない。
こんな現実あり得ない。
「?みこちゃんだよね?ゆんの友達の」
「ハイ、ユンチャントハナカヨクシテモラッテイマス」
間近で首を傾げられてこちらを見られている。
あ、そうだ。ドッキリだ。
ほら、よくファンに向けてのドッキリ。
じゃないとおかしい。
「どうしたの?」
「これ、ドッキリか何かですよね‥?」
もう、思考が散らばって推しが尊くて自分でも何言っているのかわからない。
声も震えて、変な声が出てる。
どうしよう、嬉しい。震えるくらい嬉しくて、なのに言葉は出なくて。
カバンを持つ手が震えた。