永瀬の家に着く。永瀬の兄は僕たちを送ったあと「帰り送ってあげるからね」と言い残し、いなくなった。
今、永瀬と家の中でふたりきりだ。
「昼ご飯作るから、その辺でくつろいでて」
「うん、分かった」
永瀬は買い物袋を持つとキッチンへ。僕もさっき買った手芸の商品を、持ってきた糸たちと共に撮影部屋の白いテーブルの上に置いた。
他には特にやることがない。だんだん気持ちがソワソワしてきた。チラチラと何回もキッチンの方に目をやる。
キッチンから肉を焼く音と香りが漂ってきた。落ち着かないから僕もキッチンへ。
「永瀬、な、何か手伝うか?」
「いや、大丈夫だよ」
「……集まる時、いつもこんなに料理作ってるのか?」
「いや、いつもは各自持参とか、たまに軽食を作るぐらい、かな」
「そうなんだ……」
――今日は、僕がいるから特別なのか?
永瀬は長ネギの入ったたまごスープ、鶏肉料理、ポテトサラダを同時進行で手際よく作っている。だけど料理なら負けない気がする。
手伝いたい気持ちが強くなり、僕はキャベツの千切りを始めた。
「千切り上手いね。羽月は料理もできるんだな、器用だね」と、永瀬がニコッと笑う。
「料理は、妹たちのためにやってるだけだよ」と、僕は永瀬と逆の方向を向いた。永瀬から褒められるのが嫌ではなかった。胸の辺りがちょっと温かくなって、ひっそりバレないようにニヤッとする。
永瀬と並んで作業をするのは初めてだ。永瀬は周りの空気を読み、合わせるのが得意だからか、協力して料理をする作業はスムーズに進んでいく。千切りを終えた僕はレンジで柔らかくしたじゃがいもを受け取るとそのままポテトサラダの担当となった。
「この野菜スープ、味見してみて?」
小皿に乗せたスープをスプーンに入れ、僕の口の中に入れてきた。スープを永瀬に飲ませてもらう流れに、ドキッとした。
「ち、ちょうどいい味だ」
「良かった! なんか、羽月と料理するの楽しいな」
「僕は、別に……」
しばらく無言が続いたあと、永瀬は言った。
「そうだ、この風景使うか分からないけど、撮影してるから」
「はっ? そういうのは早く言えよ」
予想外なことを言われ辺りを見回すと、斜め後ろにカメラを見つけた。学校で勝手に撮られていた時を思い出す。その時もだけど――。
「本当に勝手に映されるのは嫌だ」
「ごめん。これからはきちんと必ず伝えるから」
それっきり僕たちは無言で料理をした。
*
今、永瀬と家の中でふたりきりだ。
「昼ご飯作るから、その辺でくつろいでて」
「うん、分かった」
永瀬は買い物袋を持つとキッチンへ。僕もさっき買った手芸の商品を、持ってきた糸たちと共に撮影部屋の白いテーブルの上に置いた。
他には特にやることがない。だんだん気持ちがソワソワしてきた。チラチラと何回もキッチンの方に目をやる。
キッチンから肉を焼く音と香りが漂ってきた。落ち着かないから僕もキッチンへ。
「永瀬、な、何か手伝うか?」
「いや、大丈夫だよ」
「……集まる時、いつもこんなに料理作ってるのか?」
「いや、いつもは各自持参とか、たまに軽食を作るぐらい、かな」
「そうなんだ……」
――今日は、僕がいるから特別なのか?
永瀬は長ネギの入ったたまごスープ、鶏肉料理、ポテトサラダを同時進行で手際よく作っている。だけど料理なら負けない気がする。
手伝いたい気持ちが強くなり、僕はキャベツの千切りを始めた。
「千切り上手いね。羽月は料理もできるんだな、器用だね」と、永瀬がニコッと笑う。
「料理は、妹たちのためにやってるだけだよ」と、僕は永瀬と逆の方向を向いた。永瀬から褒められるのが嫌ではなかった。胸の辺りがちょっと温かくなって、ひっそりバレないようにニヤッとする。
永瀬と並んで作業をするのは初めてだ。永瀬は周りの空気を読み、合わせるのが得意だからか、協力して料理をする作業はスムーズに進んでいく。千切りを終えた僕はレンジで柔らかくしたじゃがいもを受け取るとそのままポテトサラダの担当となった。
「この野菜スープ、味見してみて?」
小皿に乗せたスープをスプーンに入れ、僕の口の中に入れてきた。スープを永瀬に飲ませてもらう流れに、ドキッとした。
「ち、ちょうどいい味だ」
「良かった! なんか、羽月と料理するの楽しいな」
「僕は、別に……」
しばらく無言が続いたあと、永瀬は言った。
「そうだ、この風景使うか分からないけど、撮影してるから」
「はっ? そういうのは早く言えよ」
予想外なことを言われ辺りを見回すと、斜め後ろにカメラを見つけた。学校で勝手に撮られていた時を思い出す。その時もだけど――。
「本当に勝手に映されるのは嫌だ」
「ごめん。これからはきちんと必ず伝えるから」
それっきり僕たちは無言で料理をした。
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