【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

「……眠ったか?」

「はい、ヴァネッサ様の咳も落ち着いたようですね」

「やはり旦那様の見立ては正しいのではないでしょうか」

「ああ」


レイとセリーナと共にギルベルトは部屋に入った。
顔色も悪く、かなり痩せ細っている。
ずっと出続ける咳、肌の赤みは気になるが何より精神状態の方が心配だった。


「ヴァネッサ・ティンナール……彼女を救い出せてよかった」


ギルベルトはホッと息を吐き出しながら、彼女の手首に触れて脈を確認する。
首に巻かれている包帯は痛々しい。
それからレイとセリーナにヴァネッサの様子を聞いた。


「まさか屋敷についた瞬間に自害しようとするとは……。彼らに何を聞かされてきたのやら」

「旦那様がもう少し社交界に出れば誤解されずに済むのですわ!」

「そうですわ。あんな馬鹿らしい噂を信じる貴族たちが信じられませんっ」

「口下手すぎるのです! もう少し愛想よくしてくださいませ」


レイとセリーナは不満を露わにしている。
確かにいい噂は流れていない。
だが、自分は元々貴族としては向いていない。
言いたい奴には言わせておけばいい、そう思っていた。


「他に報告はあるか?」

「そうですわね。スープも半分ほどでお腹がいっぱいとおっしゃっていて……」

「体も骨張っていて、皮膚も相当痛かったでしょうに声を出さないように必死に耐えていました」

「咳も音が漏れないように口を抑えていらして……! 私は泣きそうになってしまいましたわ」


悲惨な状況は今まででも同じだったが、ヴァネッサの場合はひどすぎるという。

(ティンナール伯爵はあまりいい噂は聞かないが、どうしてここまで……)

ギルベルトは額を押さえてため息を吐いたのだった。