あの日の第二ボタン

結局、悠依は優人を見つけることができず午後の授業を終えた。
諦めて帰宅しようとすると、人混みのその先に懐かしい顔が近づいて来ていた。

ずっと探していた優人、悠依は決して見逃さなかった。

悠依は優人の前にひょこひょこと駆け寄った。

「ひろと先輩!私のこと、覚えてますか……?」

優人はまさかの再会に驚きを隠せなかった。

「……ゆ、ゆい、ちゃん……?」

優人の目にはわずかに涙が浮かんでいた。

「覚えてて、くれた!嬉しい……久しぶりです!」

優人につられて、悠依も涙が溢れた。

「当たり前じゃん……おれ、ずっと探してたんだ……」

優人のシャツから何かがポロッと落ちる。

二人は視線を落として地面を見下ろす。

するとそこにはボタンが一つ、落ちていた。

「……あ……ボタン……」

悠依が呟く。

優人は落ちたボタンを広い、悠依の手に握らせる。

「……あの日の第二ボタン……やっと渡せた……五年だけ……待たせちゃったね……」

悠依の瞳からは大粒の雫がボロボロと溢れる。
優人は悠依を強く抱きしめた。
五年分の思いが溢れて止まらなかった。
東の空には、大きなオレンジ色の月が浮かんでいた。