「九番、ピッチャー、宮田君。」
長川高校のブラスバンドの応援が大サビを迎える。
「……ひろと先輩……打って……!」
赤塚高校のアルプススタンドにいる悠依は両手を合わせて、必死に願う。
「初球は甘い……」
優人はネクストバッターサークルで監督から聞いた言葉を心の中でつぶやく。
今までにないほどの緊張で飛び出しそうな心臓をなだめるように胸を撫で下ろし、深呼吸をつきバッターボックスに入る。
優人が初球を待っている間、遠くで聴き馴染みのある声が応援しているような気がした。
ピッチャーが投球動作に入り、優人への初球を投げる。
優人は足を踏み出し投球を見極める。
150キロ程の球がゆっくりに見える。
「ど真ん中、真っ直ぐ。……甘い……!」
優人は全ての力を振り絞り全力でバットをフルスイングする。
カキーーン
甲高い音が球場の外にまで響く。
優人が打った球は空高く弧を描いて飛んでいく。
「……入った……!」
優人はバットを投げ捨てダイヤモンドを走り出す。
辺りを見渡すとベンチではチームメイト手をあげて叫び、アルプススタンドではボールの行方を目で追いながら隣の人とハイタッチをしている。
優人が一塁ベースを回ると球場内の歓声が遅れて聞こえてくる。
喜びを噛み締めダイヤモンドを一周する。
ホームベースに戻ってくるとチームメイトが優人を出迎える。
悠依はコンコースに降り、誰もいないところでガッツポーズをする。
「やった!さすがひろと先輩!」
悠依は自分の高校が試合に負けたことなど全く悔しくなかった。
決勝のほとぼりが少しずつ冷めた球場では、表彰式が行われていた。
優勝旗を掲げる優人はインタビューを受けていた。
「ボールを打った瞬間に確信しました。最初は静寂に包まれていたんですが、歓声が遅れて聞こえてきました。ダイヤモンドを走っているときに思ったんです。自分は本当は弱い人間だと。一人では何もできない。でも、そんな僕を支えてくれる最高の仲間がいる。勝利を願ってくれる人がいる。そして、弱い本当の僕を知っていて、今でも応援してくれているであろう後輩がいます。そんな人たちのおかげで優勝という最高の結果で終わることができました。本当に応援ありがとうございました。」
優人が言い切ると、アルプススタンドから歓声と拍手が起こる。
優人のインタビューを聞いていた悠依は、途中で自分のことを言われているのではないかと思ってギクっとする。
帰りのバスの中でも心の中で優人の言葉がいつまでも響いていた。
「ナイスバッティング!」
悠依は球場の方へ向かって心の中で叫んだ。
長川高校のブラスバンドの応援が大サビを迎える。
「……ひろと先輩……打って……!」
赤塚高校のアルプススタンドにいる悠依は両手を合わせて、必死に願う。
「初球は甘い……」
優人はネクストバッターサークルで監督から聞いた言葉を心の中でつぶやく。
今までにないほどの緊張で飛び出しそうな心臓をなだめるように胸を撫で下ろし、深呼吸をつきバッターボックスに入る。
優人が初球を待っている間、遠くで聴き馴染みのある声が応援しているような気がした。
ピッチャーが投球動作に入り、優人への初球を投げる。
優人は足を踏み出し投球を見極める。
150キロ程の球がゆっくりに見える。
「ど真ん中、真っ直ぐ。……甘い……!」
優人は全ての力を振り絞り全力でバットをフルスイングする。
カキーーン
甲高い音が球場の外にまで響く。
優人が打った球は空高く弧を描いて飛んでいく。
「……入った……!」
優人はバットを投げ捨てダイヤモンドを走り出す。
辺りを見渡すとベンチではチームメイト手をあげて叫び、アルプススタンドではボールの行方を目で追いながら隣の人とハイタッチをしている。
優人が一塁ベースを回ると球場内の歓声が遅れて聞こえてくる。
喜びを噛み締めダイヤモンドを一周する。
ホームベースに戻ってくるとチームメイトが優人を出迎える。
悠依はコンコースに降り、誰もいないところでガッツポーズをする。
「やった!さすがひろと先輩!」
悠依は自分の高校が試合に負けたことなど全く悔しくなかった。
決勝のほとぼりが少しずつ冷めた球場では、表彰式が行われていた。
優勝旗を掲げる優人はインタビューを受けていた。
「ボールを打った瞬間に確信しました。最初は静寂に包まれていたんですが、歓声が遅れて聞こえてきました。ダイヤモンドを走っているときに思ったんです。自分は本当は弱い人間だと。一人では何もできない。でも、そんな僕を支えてくれる最高の仲間がいる。勝利を願ってくれる人がいる。そして、弱い本当の僕を知っていて、今でも応援してくれているであろう後輩がいます。そんな人たちのおかげで優勝という最高の結果で終わることができました。本当に応援ありがとうございました。」
優人が言い切ると、アルプススタンドから歓声と拍手が起こる。
優人のインタビューを聞いていた悠依は、途中で自分のことを言われているのではないかと思ってギクっとする。
帰りのバスの中でも心の中で優人の言葉がいつまでも響いていた。
「ナイスバッティング!」
悠依は球場の方へ向かって心の中で叫んだ。
