迎えた決勝戦。
球場のスタンドには観客が満員だった。
試合開始時刻が迫り、優人は翔輝と共にブルペンで投球練習をしていた。ブ
ルペン付近にはカメラを抱えた女子高生達がシャッターを切っていた。
そのシャッターの先に映る優人はいつになく真剣な眼差しだった。
主審の掛け声と共に試合が開始される。
試合は両者一歩も譲らず五イニングを終え、グラウンド整備が行われていた。
ベンチ内は夏の陽射しが差し込み、むせ返るほど蒸し暑かった。
「ひろ、今日、調子ええやん!制球が安定しとるで!」
翔輝が濡らしたタオルで顔を拭きながら優人に話しかける。
「おう!やっぱり歓声があるからな。吹部も暑い中、応援してくれるし。」
優人は涼しげな表情だった。
「……相手のピッチャー全然崩れないな……」
赤塚高校の吹奏楽部の生徒がつぶやく。
「当たり前でしょ!誰だと思ってんの?」
悠依は思わず自慢げになる。
「あんた、自分の立場分かってる?なんで相手チームなんか応援してるの?」
三年生の吹奏楽部の生徒が悠依のことを注意する。
悠依は「すみません……」と呟きつつも、どこか誇らしげだった。
グラウンド整備が終わると、六回の表、赤塚高校の攻撃が始まった。
ブラスバンドの応援のボルテージが上がる。
両チームともチャンスを作るものの、得点へは漕ぎつけない。
ついにお互いに無得点のまま九回の裏、長川高校の攻撃となった。
「九回の裏、長川高校の攻撃は、七番、セカンド、安藤君。」
ウグイス嬢が高らかに告げる。
長川高校のブラスバンドの熱量が明らかに高まっている。
赤塚高校のピッチャーは九イニング目になり疲れが見え始めていた。
長川高校の声援にも押し負け最初の打者相手にファーボールを許してしまう。
「八番、レフト、牧野君。」
久しぶりに走者を出した長川高校側のアルプススタンドからはアナウンスが聞こえにくくなるほどの声量が出ていた。
カキーン
金属音が球場内に響きボールが弧を描いて外野の方へ飛んでいく。
長川高校のアルプススタンドからは今日イチの歓声が巻き起こる。
しかし、打球は一塁線の外に逸れ、落胆の声が溢れる。
カウントはスリーボールツーストライク。
バッターボックスに立つ翔輝は明らかに力が入っている。
ピッチャーがボールを放つ。
翔輝はフルスイングでバットを振る。
打球は二遊間へ転がった。
ショートが球を捌き、セカンドに送り更にファーストへ送球する。
赤塚高校のアルプススタンドから歓声が湧く。
ダブルプレー。
アウトカウントがツーアウトとなった。
長川高校のベンチ前、次の打者がブンブンとバットを振っている。
球場のスタンドには観客が満員だった。
試合開始時刻が迫り、優人は翔輝と共にブルペンで投球練習をしていた。ブ
ルペン付近にはカメラを抱えた女子高生達がシャッターを切っていた。
そのシャッターの先に映る優人はいつになく真剣な眼差しだった。
主審の掛け声と共に試合が開始される。
試合は両者一歩も譲らず五イニングを終え、グラウンド整備が行われていた。
ベンチ内は夏の陽射しが差し込み、むせ返るほど蒸し暑かった。
「ひろ、今日、調子ええやん!制球が安定しとるで!」
翔輝が濡らしたタオルで顔を拭きながら優人に話しかける。
「おう!やっぱり歓声があるからな。吹部も暑い中、応援してくれるし。」
優人は涼しげな表情だった。
「……相手のピッチャー全然崩れないな……」
赤塚高校の吹奏楽部の生徒がつぶやく。
「当たり前でしょ!誰だと思ってんの?」
悠依は思わず自慢げになる。
「あんた、自分の立場分かってる?なんで相手チームなんか応援してるの?」
三年生の吹奏楽部の生徒が悠依のことを注意する。
悠依は「すみません……」と呟きつつも、どこか誇らしげだった。
グラウンド整備が終わると、六回の表、赤塚高校の攻撃が始まった。
ブラスバンドの応援のボルテージが上がる。
両チームともチャンスを作るものの、得点へは漕ぎつけない。
ついにお互いに無得点のまま九回の裏、長川高校の攻撃となった。
「九回の裏、長川高校の攻撃は、七番、セカンド、安藤君。」
ウグイス嬢が高らかに告げる。
長川高校のブラスバンドの熱量が明らかに高まっている。
赤塚高校のピッチャーは九イニング目になり疲れが見え始めていた。
長川高校の声援にも押し負け最初の打者相手にファーボールを許してしまう。
「八番、レフト、牧野君。」
久しぶりに走者を出した長川高校側のアルプススタンドからはアナウンスが聞こえにくくなるほどの声量が出ていた。
カキーン
金属音が球場内に響きボールが弧を描いて外野の方へ飛んでいく。
長川高校のアルプススタンドからは今日イチの歓声が巻き起こる。
しかし、打球は一塁線の外に逸れ、落胆の声が溢れる。
カウントはスリーボールツーストライク。
バッターボックスに立つ翔輝は明らかに力が入っている。
ピッチャーがボールを放つ。
翔輝はフルスイングでバットを振る。
打球は二遊間へ転がった。
ショートが球を捌き、セカンドに送り更にファーストへ送球する。
赤塚高校のアルプススタンドから歓声が湧く。
ダブルプレー。
アウトカウントがツーアウトとなった。
長川高校のベンチ前、次の打者がブンブンとバットを振っている。
