あの日の第二ボタン

「二学期には運動会と文化祭の二つの大きな行事があります。クラスで団結する良い機会となります。学校というのは、集団行動を……」

校長先生が始業式に壇上から語りかける。
蒸し暑い体育館の中、真面目に耳を傾ける生徒はいなかった。

二学期に入ってすぐ運動会の準備が始まった。
体育委員会が取り仕切るこの行事は柴橋も一段と張り切って取り組んでいた。

運動会を一日後に控え、体育委員は準備に追われていた。
優人と悠依は校庭のライン引きの担当に割り当てられた。
プリントを元にラインカーで白線を引いていく。

「去年の運動会は二日前に大雨が降って、前日はみんなでスポンジで水溜りをひたすら吸ったんですよ。今年は晴れよかった〜。」

ラインを引きながら優人は去年のエピソードを悠依に話す。

「えぇ〜、そうなですか!あ、それより先輩って、選抜リレーに選ばれてますよね?」

優人は恥ずかしがりながらも答える。

「そうなんすよ〜。しかもアンカーで……応援しててください!」

「もちろんです!あぁ、先輩、線が曲がってる!」

優人が引いたラインはグラグラに曲がっていた。

「もう、アンカーなんだからちゃんとしてくださいっ。」

やっちゃったと笑う優人に悠依は冗談を言って笑う。
悠依は運動会なんか来ないで、ずっとこの時間が続けばいいのにと心の底から思った。