あの日の第二ボタン

（……何がダメだったんだろう……）悠依はテスト返却を思い返す。


７９位。
悠依は自席で　呆然とする。

「ゆい、テストどうだった？」

七海が話しかけてきた。

「……７９位……」

悠依はかすれ気味の声で言う。

「え、７９ってすごいじゃん！うちなんか三桁だよ？」

七海は悠依を励ますが、悠依はまだ浮かない顔をしている。

「こんなんじゃ長川、行けないよ……」

「じゃあ、ひろとくんに勉強教えてもらうように言っとく？」

七海は名案を思いついたように言うが、悠依は首を横に振る。

「いいよ、なんか、申し訳ないし。今回はちょっと、調子が悪かっただけ。」

「ふぅ〜ん。そっかぁ。」

七海はこれ以上励ましても悠依を傷つけるだけかと思い自分の席に戻る。

気付けば岡が英語の授業を始めていた。
悠依は結果を見つめ（私って、頑張っても無理なのかな）とため息をつく。

「じゃあ、教科書の会話文、山本さん、読んでください。」

しかし、悠依は考えにふけっていて指名されていることに気づかない。

「山本さぁん？聞こええてるー？テストが終わったからって気抜いちゃだめですよ？」

悠依はやっと自分について言われていると気づいて慌てて返事するが、クラス中から笑われる。
悠依は恥ずかしさのあまり、俯きながらボソボソと教科書を読み上げる。


当番から逃げ出してきたものの、行き着く場所もなくて校舎の陰で膝を抱えて座り込む。
視界がだんだん滲んでいく。

「……私なんか……私なんか……ただの落ちこぼれだよ……」


次の当番の日が来た。
悠依は当番に行くのが怖かった。
今までにない程足取りが重いのを感じていた。
悠依は体育倉庫に近づくと優人の姿が見えたので気づかれないように気配を消しながら向かった。

「おぉ、ゆ、ゆいさん。来てたんですね！気づかなかった。」

当番管理表に名前を書いていると急に優人に声をかけられた。
悠依は名前を呼ばれたことは嬉しかったが、よりによってこっそりと当番に来ていたのが恥ずかしくて、そっけない態度をとってしまった。

優人は悠依の反応がそっけなかったのを見て、悪いことを言ってしまったのかと思った。
しかし、ただ挨拶しただけなので、もしかしたら嫌われているのかもしれないっと思って黙り込んでしまった。


（おれ、なんか嫌われるようなことしたかな……）
優人は一週間ずっと考えていた。
それでも思い当たる節がない。
（それとも、もしかして好き避けだったりする？だとしたらいいんだけどな……）
優人は咲から女子が本当は好きな人を避けてしまうことがあると聞いていた。