求愛過多な王子と睡眠不足な眠り姫



「こんにちは。ご出席頂き、ありがとうございます」

 ふいに差し込む影に顔を上げると、主役が微笑みかけてきた。

「おめでとうございます、店長。タキシード、よくお似合いです」
「ありがとう。朝岡さんは?」
「……えっと」

 結婚式会場は見知った顔ぶれが揃い、圭吾は会話に花を咲かせている。

「すいません」
「構いませんよ。彼は久し振りの再会でしょうしーーそれにしても茨さんが社に残るのは想定外でした」
「川口さんにも言われました」

 圭吾とツーショット写真を撮る川口さんを横目に、シャンパンへ口をつける。

「理由を聞いても?」
「教えたら、あの人に土下座と靴を舐めろとのアドバイスを撤回してくれます?」

 切り返しに店長の目が丸くなる。そして肩を竦めた。

「これはこれは。交渉の駆け引きがお上手になられて。営業部員として期待が出来そうです」
「お褒めに預かり光栄です。またお店へ伺います」
「婚礼家具のご用命なら是非。そうでなくても歓迎しますよ」

 一礼し、新郎は花嫁の元へ。寄り添う2人は幸せそうだ。目尻を限界まで下げる店長が全てを物語っている。