求愛過多な王子と睡眠不足な眠り姫

 視界が翻りアガーウッドの香りに包まれる。わたしを熱の残る胸に閉じ込め、鼓動を聞かせた。

「ドキドキしてるだろ。君をまた抱けるなんて」
「だから! そんなキャラだったっけ?」

 感情を素直に表現されると戸惑ってしまう。慣れないアプローチに真意を探った。

「ある人からアドバイスを貰ってね」
「アドバイス?」

 する側であって、されるタイプじゃない。というより恭吾は人の忠告など聞き入れず、自分の思うまま行動する。ワンマンだ。

「朝岡の後継者であるのが原因で別れを告げられた時、出自を呪った。それまで朝岡であるのがアイデンティティーだったのが、だよ?」

 ふ、と微笑むのに演技っぽさはなく、自然。おろした前髪が汗で張り付いていたので剥がしてあげる。

「ちょっと、話の途中でしょ?」

 わたしの指先を捕捉して口付けたり、甘噛みする。

「ミントが好きなら全部なげうって追い掛ければいい、思っても足が動かなかった。朝岡の名を捨てたら自分に価値はない。無価値な僕を想ってくれるのか、自信が無かったんだ」
「わたしはあなたに相応しいパートナーになる自信が無かったの。御曹司という身分を捨てさせたい訳じゃない」