求愛過多な王子と睡眠不足な眠り姫

「うん、ドアは開いたが埒が明かないってやつね。よし、プリサブジを食べよう! 朝食はまだだろう?」
「ちょっ、勝手に上がらないで下さい!」

 軽やかにわたしの足を跨ぐ。

「ん? プリサブジはインドの伝統料理だよ」
「え、いや、わたしはそんな事を言ってるんじゃなく」

 靴を脱いだらきちんと揃え、トレンチコートの裏面を表にして腕へかける仕草は滑らか。制止する隙がない。

「僕が朝食を作っているうちにシャワーを浴びれば? それともノーブラのまま口説かれたい?」

 薄い笑顔を浮かべる。スイカでたとえるなら12等分。

「な、な、なに、バカな事を」

 もこもこパジャマの胸元を思わず押さえてしまう。

「無防備だとすぐ撃ち抜かれちゃうぞ、っていう意味。ほらバッキューン!」

 突き立てた人差し指で心臓の少し上をトンッとされて、その場へ座り込む。

「あ、本当にノーブラ。変わらないね、君は」
「……警察呼びますよ、本気で!」
「空腹になると不機嫌になるのも変わってない。いいからお風呂、入っておいで」
「あなたがいるのに呑気に入っていられませんが! 覗かれそうで!」
「おいおい、覗きは犯罪だ。するはずないだろう?」