求愛過多な王子と睡眠不足な眠り姫



「あんな所でしゃが込まれて泣かれたら、僕が君のお持ち帰りに失敗したみたいじゃないか」
「……はい、すいませんでした」
「いいんだよ? 時間も時間で目撃者が少ないし、君は今こうして僕の部屋にいる。結果的にお持ち帰りは成功した訳だ」
「本当に申し訳ありませんでした! あと差し出がましいですが、お湯が沸いているみたいです」

 わたしは今、2年ぶりに恭吾の部屋へ来ているーーというより運び込まれたの方が適切な表現か。
 そしてお説教を受けている。

「コーヒーでいい?」
「苦いのはちょっと」
「……」
「いえ、ありがたく頂きます」

 恭吾は返事を待たずキッチンへ向かう。
 泣き止むまではとても紳士的であったが、段々と落ち着きを取り戻すと様子が変わり、キスに怯えて道の真ん中で泣いたわたしに呆れる。

「ほら、カフェオレ。熱いから気を付けて」
「あ、ありがとうございます!」
「なんで敬語? 普通に喋って。キスしようとしたらギャンギャン泣かれて距離を感じてるんだけど?」
「ギャンギャンは言い過ぎじゃ? メソメソとかでは?」

 2人分のマグカップを持って戻った彼は正面へ腰掛ける。

「メソメソ泣いてるだけでシャツのボタンが飛ぶか? そんなに嫌だった? 僕とキスするの」

 フゥフゥ、冷ます仕草を観察され気まずい。真顔でネクタイを緩めるものだからびくつき、カップを揺らしてしまった。