求愛過多な王子と睡眠不足な眠り姫

 わたしが好みそうな飲料、お菓子、アイスが目一杯詰まったビニールをガサガサ鳴らし、胸騒ぎと共鳴する。

「食べ切れないよ、こんなに沢山」
「昼間のお詫びと父との件のお詫びも兼ねてる。スイカのアイス、好きだろ?」

 皆と逆行して進む。買い物袋の持ち手をそれぞれ握りアイスを取り出す。
 月が隠れた道のりは薄暗く、力無さげに伸びた影が後をついてくる。

「よく食べたよな?」
「うん、このアイスは値上げしないみたい。ニュースで読んだ」
「それは企業努力の賜物だ」
「消費者目線じゃなく企業目線、変わらないね」

 スイカを模したアイスは緑の皮の部分、タネまで食べられる。しゃく、しゃく、咀嚼音でわたし達は互いを探っていた。昔に戻れた気がするだけで実際は違う。

「今日一日、目まぐるしかった」

 どの時間帯も濃厚で、甘い物を摂取する傍らどっと疲れが出る。

「まだ終わってない。僕等は2年も時間が止まっていたんだ、どんどん巻いていくぞ」

「……スイカアイス、こんな味だっけ? 気のせいかな、もっと美味しかった気がするんだけど」
「ミントは本物のスイカを食べた後だから、そう感じるじゃないか? 僕は美味しいよ」

 平らげた棒と赤くなった舌を披露する。

「そういえば川口さんとは?」
「『川口さんとは?』とは?」

 わたしの声音を真似て傾げてきた。ククッとスイカ8等分の笑顔を添えて。

「質問を質問で返さないで」
「なら答えるよ。ミントもその後の質問に答えて、いい?」