徒歩で部屋に帰る途中、コンビニに立ち寄った。近くの公園で花見をしていた人達も来店し、この時間なのに賑わう。

 わたしは中に入らないで桜の花びらが張り付く駐車場を眺める。と、側に設置されたゴミ箱から缶がこぼれ落ちた。

「お待たせ。ミントの好きな紅茶、売っていなかった」

「あの紅茶、販売終了したよ。知らない?」

「そうか、知らないな。コンビニ、利用しないから」

「さすが、御曹司! わたしはコンビニお弁当ばかり」

「……自炊を推奨したいが、君の場合は食事をしているだけマシか」

「うわ、空き缶拾いが似合わない」

「はぁ、御曹司もゴミが落ちてたら拾うだろ」

 わたしへビニール袋渡しつつ、片手でゴミを入れ直す。缶には少々中身が残っていたらしく彼の指先が汚れる。

「あっ、ハンカチは前のスーツに入れたままだった。おしぼりでいい?」

「いや、自分のがあるからいいよ。それとスーツ、よく似合ってる。僕好みだ」

 お互い名前呼びに戻り、昔に戻れたような錯覚に陥りそう。

 蛍光灯の下、恭吾はハンカチで手を拭う姿すら様になっている。花見客が横目にあの人イケメン、カッコイイとはじゃぐ。

「朝岡部長はおモテになりますねぇ」

「そう? 2年程はフリーだけど? さて、せっかくだし桜でも見ていこうか」

「ライトアップ、終わってるのに?」

「いいじゃん、いいじゃん。ほら、おいで」