「ならば単刀直入に言おう。息子との今後をどう考えている?」
朝岡ホールディングス社長、朝岡正広氏。わたし達が勤める会社の株式も保有し、経営戦略に深く関わる。部長の言葉を借りれば『そういうつもり』がなくとも各方面より認知される人物だ。
「父さん! それは!」
「恭吾に聞いていない」
ぴしゃりと反論を封じる朝岡社長。社長職を退いたあと会長としてグループ傘下に影響をもたらす未来は言わずもがな。あの部長も押し黙るほどの迫力がある。
「恭吾さんとは2年前までお付き合いしていました。今は上司と部下の関係です。今後とおっしゃいますが、部長は退職予定で……」
「つまり茨さんには気持ちはないと?」
社長の顔色は変わらない。わたしの心の内を暴く程度に表情筋を使わなくてもいいのだろう。
「愚息の色恋に口を出す野暮な真似をしたい訳ではない。だが、いつまでも遊ばせておけないのが親心でね」
「遊ばせる?」
この言葉が何に掛かっているのか、即座に気取る。交友関係をさしているんじゃなく、子会社で働いている旨を揶揄したのだ。
朝岡ホールディングス社長、朝岡正広氏。わたし達が勤める会社の株式も保有し、経営戦略に深く関わる。部長の言葉を借りれば『そういうつもり』がなくとも各方面より認知される人物だ。
「父さん! それは!」
「恭吾に聞いていない」
ぴしゃりと反論を封じる朝岡社長。社長職を退いたあと会長としてグループ傘下に影響をもたらす未来は言わずもがな。あの部長も押し黙るほどの迫力がある。
「恭吾さんとは2年前までお付き合いしていました。今は上司と部下の関係です。今後とおっしゃいますが、部長は退職予定で……」
「つまり茨さんには気持ちはないと?」
社長の顔色は変わらない。わたしの心の内を暴く程度に表情筋を使わなくてもいいのだろう。
「愚息の色恋に口を出す野暮な真似をしたい訳ではない。だが、いつまでも遊ばせておけないのが親心でね」
「遊ばせる?」
この言葉が何に掛かっているのか、即座に気取る。交友関係をさしているんじゃなく、子会社で働いている旨を揶揄したのだ。

