求愛過多な王子と睡眠不足な眠り姫



 休日の朝はゆっくりだ。遮光カーテンを引きアラームもセットしていない。ひたすら惰眠をむさぼる。
(幸せ……)

 意識が覚醒するかしないかの領域は心地良い。ふわふわする。この微睡みを味わいたくて一週間働いたと言っても過言じゃなく、特に今週は心身ともに疲れ果てた。
 気質上、言われるまま働くのは性に合わず、やるからには納得いく仕事をしたい。それも残業をしない縛りをかして。

 言ってしまえばプライドが高い。営業という慣れない業務に一刻も早く順応しようと張り切ってしまう。
(ーー今は仕事の事を考えるのはやめよう)

 浮上しかけた思考を沈め、ブランケットを頭から被る。と、そこへ『ピンポーン』インターフォンが響く。
(誰? 約束なんてしてないけど?)

 荷物が届く予定もない。しかしピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、容赦なく連打された。
 このままじゃ近所迷惑になる。仕方なく身体を起こすと訪問者の顔を確認しに向かう。

 陽射しが差し込むリビングには脱皮した風に脱いだスーツ、食べかけのコンビニ弁当が散乱し、起き抜けのこみかみへ現実(リアル)を突き付けた。
 『茨さんって生活感がない』と教育担当の川口さんに言われたが、とんでもない。なんなら生活感しかない1LDKです。

「はい、どちら様ですか?」

 地声で問う。

「茨さん、おはよう! 遊びに来たよ」