求愛過多な王子と睡眠不足な眠り姫

 季節の花々がライトアップされ、本来の色味を損なわない演出加減が好ましい。不相応な着飾りで自分を大きく見せようとしないところが眩しいくらいだ。

「好きな人はいますよ」

 やや間があって返される。

「勤務時間外です。この際、腹を割って話さない?」

 フランクかつ攻撃性を帯びる口調に身構えた。
 川口さんは運ばれてきた食前酒を掲げる。彼女がお酒にめっぽう強い旨は聞き及び、飲み比べに持ち込まれたらたまったもんじゃない。こちらは睡眠不足なうえ下戸だ。

「何についてですか?」
「察しはついてるんじゃないの?」

 マナーとしてグラスへ口を付けた所作を鼻で笑われる。

「ついてますが、話すつもりはありません」
「はぁ、つまんない人。こんな面白みもない性格の何処がいいんだか」

 ネイルを施した指を大きく広げ、わたしのつまらなさを指摘する都度折っていく。ネイルは職場ではしていないので休日仕様だろう、ここからも川口さんの女子力の高さが表れていた。

「無愛想で、可愛気がなくて、素材はいいけど地味」
「そんな挑発に乗りませんから。言われ慣れてます。せっかくの機会ですし、お料理を味わいましょう」

 既に飲み干してあるグラスへ自分の分を合わせた。
 まさかこれが闘いのゴング代わりになるとはーー