もうどれくらい歩いたのでしょうか。ぐるりーなはただ真っ直ぐ進んでいきました。
 そろそろ疲れてきたとき、看板が立っているのが見えました。近づいて見てみると、なんで市と書かれていました。ぐるりーなは、なんで市、というところがあるのは知っていましたが、詳しくは知りませんでした。なので、知らないところへ行くと思うと、すこしワクワクしてきました。なにせ、ずっと部屋にいたにですから。外の世界をあまり知らないのです。なんで市は、自然豊かなところでした。時々、三角屋根の家がポツンとあるくらいで、あまり建物はありませんでした。そして、しばらく歩いていると、なんで族と呼ばれる民族が見えてきました。体はぐるぐる族と一緒ですが、顔が違うのと、毛が生えていません(女の子は一本生えてます)。新鮮な気持ちでぐるりーなは歩き続けました。でも、やっぱり疲れてきました。近くにあった、木陰で休むことにしました。と、ちょうどぐるりーなが座ったタイミングで、誰かも座りました。となりに座った子は、どうやらキラリン族のようでした。ピンクのリボンをしています。
「あ、アナタも休憩?」
 突然リボンの子が話しかけてきました。
「えっ、うん…」
 慌ててぐるりーなは返事しました。
「ココ、ちょうどいい休憩スポットなのよ。」
「へえ…」
 リボンの子がぐるりーなの方をみました。
「アナタぐるぐる族の子?」
「う、うん、そうだよ。」
「あれ?もしかして、ぐるりーな姫?テレビで見たことあるわ。」
 ぐるりーなはギクっとしました。白杖するしかなさそうです。
「う、うんそうよ。ちょっと色々あって、家出してきたの。」
「へえ、王女も大変ね。よかったら、ウチくる?」
「えっいいの!」
「うん。じゃ、案内してあげるわ。ついてきて!」
 リボンの子はスッと立ち上がりました。ぐるりーなも続いて立ち上がりました。
 そしてリボンの子についていきました。

 しばらく歩いていると、ひとつの家が見えてきました。小さい、三角屋根の家でした。
「ココがわたしの家。他にもいるけど。」リボンの子が指していいました。
 リボンの子がドアをトントンとたたくと、中から声がしました。
「はあーい、どうぞ。」
 リボンの子がドアをガチャッと開けました。そして、中に入っていきました。続いてぐるりーなも入りました。
 中は広くて、真ん中に大きなテーブルがありました。そして、周りに色んな子がいました。種族バラバラです。一番に、ト族の子が出てきました。
「あっ、どうも…ぐるりーなです。」
 一応ぐるりーなは自己紹介しました。
「どうも、私はなそでい!よろしくね!」
 なそでいはにっこりしていいもした。
「さ、どうぞ入って!そうだ、うるさいの平気?」
「あ、いや…苦手です…」
「なら、2階にいていいよ。ついてきて!」
 ぐるりーなはなそでいについていきました。2階は静かで、ぐるりーなは落ち着きました。納戸にスペースをつくってもらって、ぐるりーなはそこにいることにしました。なそでいは下へ行ってしまいました。
 たしかに静かで落ち着きますが、だんだんぐるりーなは寂しくなってきました。そして、ぐるんのことを思い出しました。小さいころからずっと一緒にいてくれて、お話してくれました。いくらぐるりーながイヤなことをいっても、優しく受け止めてくれました。本当の自分を愛してくれました。でも、もういません。引っ越してしまったのです。もう、お話できません。途端に、ぐるりーなの目から涙が出てきました。と、その時、ちょうどリボンの子がやってきました。ぐるりーなの姿をみて、ビックリしています。「ちょっと、どうしたのよ!」ぐるりーなは慌てて顔を隠そうとしました。でももう遅いとわかり、隠すのをやめました。静かにリボンの子がとなりに座りました。そして、ささやくようにいいました。「なんでもいって。どうしたの?」ぐるりーなはおそるおそるこたえました。「だいすきなお手伝いさんが、いなくなっちゃって…」
「いなくなった?なんで?」
「引越しちゃったの。旦那さんの仕事の都合で。」
「そっか…それは辛いわね」
「しかも、お手伝いさんは、特別だったんだ。ゆういつ、本当の自分でいられたの。」
 気づいたら、ぐるりーなは本音も明かしていました。まだ会って1日もしていない子に。話おわって、ぐるりーなは我にかえりました。そして、自分がこわくなりました。まだちょっとしか会っていない子に、こんなに喋っちゃうなんて…。
「そうだったのね。でも、ぐるりーな、アナタ本当の自分を他の人にもだしてもいいんじゃない?」
「どうして?いい子でいなくちゃ。」
「逆にどうして?ぐるりーなはぐるりーななのよ。どうして、本当のアナタでいちゃいけないの。」
「ダメよ。本当はわかってるでしょ。王女に相応しくなるには、フリをしなくちゃなのよ!」
「ぐるりーな、“相応しく”ってなに?いい子が相応しいとは、限らないわ。ありのままの方がいいでしょ。」
 だんだん、ぐるりーなはリボンの子にムカついてきました。
「ふつうの子にはわかんないよね!いい子でいなきゃ、悪口いわれるし、嫌われるのよ!憧れる子が多いけど、実際は王女ってブラックなのよ!!」
「わかんないわよ!!でも、わたしはぐるりーなにムリしてほしくない!我慢してほしくない!つくりものの自分がすかれるより、本当の自分が嫌われる方がいいじゃない?」
「どうして、そんなに思ってくれるの?まだ、会って1日も経ってないのに…」
「なんとなくよ。似てるからかもね。」
「似てるって、どこが?」
「うーん、本当の自分隠してるとか?」
「へえ、そうなの?あっそういえば、アナタなんていうの?」
「わたし?丸美よ。」
「よろしくね、丸美。」
 丸美はにっこりして、うなずきました。
「そういえば、もうすぐおやつよ!誘いにきたんだったわ。一緒行きましょ。」
 丸美がいいました。ぐるりーなは返事の代わりにうなずきました。そして、丸美と一緒に下へ行きました。