しばらく歩くと、ひとつの家が見えてきました。
「あそこね?ココの市長がいるのは…」
ぐるりーながおずおずとききました。
「そうですよ。姫さま、お行儀よくですよ。」
ぐるんが笑いながらいいました。
「ちょっと、バカにしてるの?あたし、一応姫よ、王女よ!!」
「ふふ、そうですね。じゃ、姫さま、ドアたたいてください。」
「えっあたしが?」戸惑ってぐるりーながいいました。
「そりゃあ、王女さまがね。」
ぐるんがまったくたたかないので、仕方なくぐるりーなはドアをトントンとたたきました。
ガチャッという音がして、中から優しそうな人が出てきました。
「あっ、アナタたちが!」
その人は目を輝かせました。
「そうです。下見、みたいなものですね。中、入ってもいいですか。」
ぐるんが固まっているぐるりーなの代わりにいいました。
「どうぞ、どうぞ。」
まずキラリン市の市長が入り、続いてぐるりーな、ぐるんが入っていきました。
中はそこまで広くも狭くもありませんでした。真ん中に大きなテーブル、そしてテーブルを囲むイスがありました。イスにぐるりーなは座らせてもらいました。ぐるんは立ったままで、市長はぐるりーなの前に座りました。
「まず、キラリン市に来てくれてありがとうございます。そして、いかがでしたか?」
市長が優しくききました。
「え、えっと素晴らしいところですね!」
ぐるりーなは慌てていいました。本当はまだちょっとしかいなくて、わかりません。でも、わからないなんて言えません。
「そうですよね!さすがぐるりーな様ですね。」
「あ、ありがとうございます。」
「で、どうです?交流会、一緒にできそうですか。」
「は、はい。よろこんで」
「ふふ、そうですよね。じゃあ、また明日会いましょう。」
ぐるりーなとぐるんはイスから立ち上がると、市長にお礼をいって、家を出ました。
「ふう…演技するのって疲れるわ。いちいち相手がどう思うかきにしなくちゃいけないし。」
帰り道を歩いているとき、ぐるりーながつぶやきました。
「そうですね。でも、私はココが素晴らしいと思いますけど。」と、空を見上げてぐるんが返事しました。
おどろいてぐるりーなはいいました。「えっ、もうココの魅力がわかったの?」
「観察力があるとすぐにわかりますよ。」
「遠回しにあたしが観察力ないっていってるわね。」
「事実ですよ。」
「むう…」
会話をしているうち、気がつくともうキラリン市でした。
ぐるりーなは自分の部屋に着くと、すぐにベットでねむりました。
新しいところ、人…ぐるりーなはこのふたつでぐったりと疲れていました。
朝、ぐるりーなはぐるんの声で目を覚ました。
「姫さま、今日はパーティですよ!」ぐるんが陽気な声でいいました。
ぐるんの言葉に、ぐるりーなは一気に眠気が飛びました。
「うそ、今日だっけ!」
「そうですよ、まさか忘れてたんですか。」
ぐるりーなは肩をすくめてうなずきました。
「まあ、姫さま、一大イベントをわすれるなんて…とにかく、準備しますよ!」
朝食を食べたあと、ぐるりーなたちは大忙しでした。ドレスを着たり、持ち物の準備をしたり、家を閉める準備をしたり…。
出発するころには、ぐるりーなはヘロヘロでした。これからパーティと思うと、泣きたい気分でした。
一方でぐるんは元気でした。凄いなあ…とぐるりーなは思いました。
――
1時間かけて、キラリン市に着きました。普段ずっと部屋にいるぐるりーなは、身体中が痛みました。
でも、そんな理由でパーティに参加しないわけにはいきません。頑張って耐えるしかなさそうです。
パーティ会場に着くと、たくさんの人がいました。それも、色んな種族。ト族、なんで族、もも族、リンルン族、たま族。その中に、昨日会ったキラリン市長もいます。ぐるりーなはぐるんと中に入っていきました。そして、いよいよ、パーティが始まりました。ぐるりーなのお父さん、そしてお母さんが真ん中にいます。マイクを持って、なにやら喋っていました。でも、ぐるりーなはそれどころではありませんでした。
緊張と不安でどうにかなってしまいそうです。なんとかぐるんと手をつないで、落ち着きました。ぐるりーなの両親が喋りおえると、会場は拍手でつつまれました。そして、その中を両親は堂々と歩きました。ぐるりーなはその様子をただ眺めていました。
「わあ、アナタがぐるりーな様?」
とつぜん後ろから高い声がしました。ビックリして、ぐるりーなは振り向きました。キラリン族の女の人でした。
「ええ、そうですが…」
「へえ、お若いのねえ。まだ子ども?」
「は、はい。」
「凄いわね!王女なんてー羨ましいわ。」
「あ、ありがとうございます。」
それからちょっと会話をして、女の人はいなくなりました。
ぐるりーなはほっとしました。いつまで演技をしなくちゃいけないのか、不安になっていたからです。
「姫さま、この後はステージに立って喋るんですよ。できますか?」
心配そうにぐるんがききました。
「あたしをなんだと思ってるの。だいじょうぶよ。」ぐるりーなはウインクしてこたえました。
「そうですか?ムリしないでくださいね。」
ドキドキしながら、ぐるりーなはステージへ立ちました。会場がザワついています。なんていってるのかはわかりませんが、多分いいことではなそうです。マイクをもらって、ぐるりーなは喋りだしました。
「みなさま、今日はパーティに参加してくださり、ありがとうございます。えっと…こうして無事開催できて嬉しいです。…」
――次なんていえばいいんだっけ…? ぐるりーなはとつぜん固まってしまいました。会場がよりザワザワしだしました。笑い声もきこえます。早くぐるん来て…とぐるりーなは願いました。ちょうど、今はトイレへ行ってしまっているのです。誰も助けてくれようとしてくれなくて、ぐるりーなはますます不安になりました。――どうしよう、早く思い出さなきゃ…でもどうしても思い出せないよ…
時だけがずっと過ぎていきます。ようやく、ぐるんがトイレから戻ってきました。それに気づいて、ぐるりーなは心底ほっとしました。ぐるんは会場の様子で、何があったか読み取りました。ぐるんはステージへ立つと、ぐるりーなからマイクを受け取りました。そして、ぐるりーなにもう帰っていいよというサインを送ってくれました。察知したぐるりーなは、人波を潜り抜けて、会場を出ました。外は空気がおいしくて、ぐるりーなは思わず吸いこみました。今まであった不安や緊張がスッと出ていきました。
一方会場ではぐるんが喋っていました。
そして、その後すぐにパーティは終わりました。いっせいにみんな外へ出ました。休んでいたぐるりーなは、ビックリしました。そして、ぐるりーなを見た人は必ず悪口をいいました。
「こんな子が王女でいいの?」
「王女失格じゃん。」
「パーティ中逃げだして、お手伝いに言わせるとか、王女としてカスじゃん。」
きくたび、ぐるりーなの心が傷つきました。
――あたしなんて、王女に相応しくないのかも…
「姫さま、どうしましたか。」
ぐるんが優しくいいました。
「いや、あたしは王女に相応しくないのかなって…。」
下を見てぐるりーなは返事しました。
「そんなことないですよ。姫さまは立派な王女ですよ。」
「うう…ありがとう、ぐるん。」
「誰かに何かいわれたんですか?」
「いや…だいじょぶよ。ただ、思っただけ。」
「そうですか?」
――ぐるんにこれ以上心配かけたくないもん。いえないよ…
ぐるりーなは、ぐるんと手をつないで家に帰ることにしました。まだ、両親は残るそうです。
また1時間かけて、歩いて家に着きました。
部屋に着くと、ベットへ転がりました。
――ぐるんはああいってくれたけど、やっぱあたしは王女に相応しくないにかも…。毎日親にも自分を隠していなきゃだし、もう王女でいるの、イヤだな…
と、思ったその時…。部屋のドアがトントンとノックされました。
「ぐるん?どうぞ入って。」
でも、こたえた声はぐるんではありませんでした。
「いや、ぐるんではない。とにかく、入るぞ。」
ガチャッと音がして、ドアが開きました。
「お父さま!えっと、どういうご用でしょう?」
「実はお手伝いのぐるんが引っ越すことになって、お手伝いを辞めることになったんだ。」
一瞬、ぐるりーなは固まりました。そして我が耳を疑いました。
「えっと、もう一度いってください。」
「だから、ぐるんがココを辞めるんだよ。」
まだぐるりーなは信じられませんでした。
「どうして、突然引越しなんか…!」
「旦那さんの仕事に都合だそうだ。」
お父さんの顔を見てみました。真剣です。もう、信じないわけにいきません。ぐるりーなは泣きたいのをグッとこらえました。
「そうなんですか。」
ぐるりーなはかすれた声でなんとかそうこたえました。
「これだけだ。じゃあな。」
お父さんは、ぐるりーなの返事も待たないで帰ってしまいました。
お父さんがいなくなった途端、ぐるりーなの目から涙が出てきました。
――ゆういつの本当にあたしでいられる、ぐるんが…ゆういつの味方が…いなくなる?
ベットの中でぐるりーなは泣き続けました。
気がつくと、ぐるりーなは寝ていました。夢の中で、ぐるんと喋っていました。
目が覚めると、もう朝でした。お父さんの声がしました。ガチャッと音がすると、お父さんがいました。
「まだ寝てたのか。もうレッスンの時間だろう?」
お父さんの声でぐるりーなはガバッと起きあがりました。と、同時にお腹がぐ〜となりました。
「お父さま、お腹すいちゃいました。」
「でも、先にレッスンだ。いいか?」
「どうしてですか?優先するのはお腹の方でしょう?」
空腹だからか、寝ぼけているのか、ぐるりーなのいい子のお面がとれてしまいました。
「反抗するなんて珍しいな。でも、レッスンが先だ。昨日サボったんだからな!そりゃあ、レッスン優先だ。さ、行くぞ。」
「イヤだ!先、ごはん!」
「はあ…お前は王女なんだぞ?レッスンサボっていいもんか。」
「もうイヤになっちゃう。王女、王女って。あたし、まだ子どもなのよ?王女になんて、生まれたくなかった。」
ぐるりーなはついに本音をいってしまいました。
「なんだと!」
お父さんの怒りもマックスになってしまいました。
「そんなこという子はオレの子どもじゃない!出てけっ」
「ふん、こんなとこ出てってやるわよ!」
お父さんはドアをドンっと閉めていきました。
一方、ぐるりーなは気分がとてもいいかんじでした。ずっといいたかったことをいえて、スッキリもしました。でも、まずいことになりました。家を出なければなりません。とにかく、最低限の荷物を持って、窓から裏庭へ出ました。
そして、塀を飛び越えて、行くあてもなく歩きだしました。
「あそこね?ココの市長がいるのは…」
ぐるりーながおずおずとききました。
「そうですよ。姫さま、お行儀よくですよ。」
ぐるんが笑いながらいいました。
「ちょっと、バカにしてるの?あたし、一応姫よ、王女よ!!」
「ふふ、そうですね。じゃ、姫さま、ドアたたいてください。」
「えっあたしが?」戸惑ってぐるりーながいいました。
「そりゃあ、王女さまがね。」
ぐるんがまったくたたかないので、仕方なくぐるりーなはドアをトントンとたたきました。
ガチャッという音がして、中から優しそうな人が出てきました。
「あっ、アナタたちが!」
その人は目を輝かせました。
「そうです。下見、みたいなものですね。中、入ってもいいですか。」
ぐるんが固まっているぐるりーなの代わりにいいました。
「どうぞ、どうぞ。」
まずキラリン市の市長が入り、続いてぐるりーな、ぐるんが入っていきました。
中はそこまで広くも狭くもありませんでした。真ん中に大きなテーブル、そしてテーブルを囲むイスがありました。イスにぐるりーなは座らせてもらいました。ぐるんは立ったままで、市長はぐるりーなの前に座りました。
「まず、キラリン市に来てくれてありがとうございます。そして、いかがでしたか?」
市長が優しくききました。
「え、えっと素晴らしいところですね!」
ぐるりーなは慌てていいました。本当はまだちょっとしかいなくて、わかりません。でも、わからないなんて言えません。
「そうですよね!さすがぐるりーな様ですね。」
「あ、ありがとうございます。」
「で、どうです?交流会、一緒にできそうですか。」
「は、はい。よろこんで」
「ふふ、そうですよね。じゃあ、また明日会いましょう。」
ぐるりーなとぐるんはイスから立ち上がると、市長にお礼をいって、家を出ました。
「ふう…演技するのって疲れるわ。いちいち相手がどう思うかきにしなくちゃいけないし。」
帰り道を歩いているとき、ぐるりーながつぶやきました。
「そうですね。でも、私はココが素晴らしいと思いますけど。」と、空を見上げてぐるんが返事しました。
おどろいてぐるりーなはいいました。「えっ、もうココの魅力がわかったの?」
「観察力があるとすぐにわかりますよ。」
「遠回しにあたしが観察力ないっていってるわね。」
「事実ですよ。」
「むう…」
会話をしているうち、気がつくともうキラリン市でした。
ぐるりーなは自分の部屋に着くと、すぐにベットでねむりました。
新しいところ、人…ぐるりーなはこのふたつでぐったりと疲れていました。
朝、ぐるりーなはぐるんの声で目を覚ました。
「姫さま、今日はパーティですよ!」ぐるんが陽気な声でいいました。
ぐるんの言葉に、ぐるりーなは一気に眠気が飛びました。
「うそ、今日だっけ!」
「そうですよ、まさか忘れてたんですか。」
ぐるりーなは肩をすくめてうなずきました。
「まあ、姫さま、一大イベントをわすれるなんて…とにかく、準備しますよ!」
朝食を食べたあと、ぐるりーなたちは大忙しでした。ドレスを着たり、持ち物の準備をしたり、家を閉める準備をしたり…。
出発するころには、ぐるりーなはヘロヘロでした。これからパーティと思うと、泣きたい気分でした。
一方でぐるんは元気でした。凄いなあ…とぐるりーなは思いました。
――
1時間かけて、キラリン市に着きました。普段ずっと部屋にいるぐるりーなは、身体中が痛みました。
でも、そんな理由でパーティに参加しないわけにはいきません。頑張って耐えるしかなさそうです。
パーティ会場に着くと、たくさんの人がいました。それも、色んな種族。ト族、なんで族、もも族、リンルン族、たま族。その中に、昨日会ったキラリン市長もいます。ぐるりーなはぐるんと中に入っていきました。そして、いよいよ、パーティが始まりました。ぐるりーなのお父さん、そしてお母さんが真ん中にいます。マイクを持って、なにやら喋っていました。でも、ぐるりーなはそれどころではありませんでした。
緊張と不安でどうにかなってしまいそうです。なんとかぐるんと手をつないで、落ち着きました。ぐるりーなの両親が喋りおえると、会場は拍手でつつまれました。そして、その中を両親は堂々と歩きました。ぐるりーなはその様子をただ眺めていました。
「わあ、アナタがぐるりーな様?」
とつぜん後ろから高い声がしました。ビックリして、ぐるりーなは振り向きました。キラリン族の女の人でした。
「ええ、そうですが…」
「へえ、お若いのねえ。まだ子ども?」
「は、はい。」
「凄いわね!王女なんてー羨ましいわ。」
「あ、ありがとうございます。」
それからちょっと会話をして、女の人はいなくなりました。
ぐるりーなはほっとしました。いつまで演技をしなくちゃいけないのか、不安になっていたからです。
「姫さま、この後はステージに立って喋るんですよ。できますか?」
心配そうにぐるんがききました。
「あたしをなんだと思ってるの。だいじょうぶよ。」ぐるりーなはウインクしてこたえました。
「そうですか?ムリしないでくださいね。」
ドキドキしながら、ぐるりーなはステージへ立ちました。会場がザワついています。なんていってるのかはわかりませんが、多分いいことではなそうです。マイクをもらって、ぐるりーなは喋りだしました。
「みなさま、今日はパーティに参加してくださり、ありがとうございます。えっと…こうして無事開催できて嬉しいです。…」
――次なんていえばいいんだっけ…? ぐるりーなはとつぜん固まってしまいました。会場がよりザワザワしだしました。笑い声もきこえます。早くぐるん来て…とぐるりーなは願いました。ちょうど、今はトイレへ行ってしまっているのです。誰も助けてくれようとしてくれなくて、ぐるりーなはますます不安になりました。――どうしよう、早く思い出さなきゃ…でもどうしても思い出せないよ…
時だけがずっと過ぎていきます。ようやく、ぐるんがトイレから戻ってきました。それに気づいて、ぐるりーなは心底ほっとしました。ぐるんは会場の様子で、何があったか読み取りました。ぐるんはステージへ立つと、ぐるりーなからマイクを受け取りました。そして、ぐるりーなにもう帰っていいよというサインを送ってくれました。察知したぐるりーなは、人波を潜り抜けて、会場を出ました。外は空気がおいしくて、ぐるりーなは思わず吸いこみました。今まであった不安や緊張がスッと出ていきました。
一方会場ではぐるんが喋っていました。
そして、その後すぐにパーティは終わりました。いっせいにみんな外へ出ました。休んでいたぐるりーなは、ビックリしました。そして、ぐるりーなを見た人は必ず悪口をいいました。
「こんな子が王女でいいの?」
「王女失格じゃん。」
「パーティ中逃げだして、お手伝いに言わせるとか、王女としてカスじゃん。」
きくたび、ぐるりーなの心が傷つきました。
――あたしなんて、王女に相応しくないのかも…
「姫さま、どうしましたか。」
ぐるんが優しくいいました。
「いや、あたしは王女に相応しくないのかなって…。」
下を見てぐるりーなは返事しました。
「そんなことないですよ。姫さまは立派な王女ですよ。」
「うう…ありがとう、ぐるん。」
「誰かに何かいわれたんですか?」
「いや…だいじょぶよ。ただ、思っただけ。」
「そうですか?」
――ぐるんにこれ以上心配かけたくないもん。いえないよ…
ぐるりーなは、ぐるんと手をつないで家に帰ることにしました。まだ、両親は残るそうです。
また1時間かけて、歩いて家に着きました。
部屋に着くと、ベットへ転がりました。
――ぐるんはああいってくれたけど、やっぱあたしは王女に相応しくないにかも…。毎日親にも自分を隠していなきゃだし、もう王女でいるの、イヤだな…
と、思ったその時…。部屋のドアがトントンとノックされました。
「ぐるん?どうぞ入って。」
でも、こたえた声はぐるんではありませんでした。
「いや、ぐるんではない。とにかく、入るぞ。」
ガチャッと音がして、ドアが開きました。
「お父さま!えっと、どういうご用でしょう?」
「実はお手伝いのぐるんが引っ越すことになって、お手伝いを辞めることになったんだ。」
一瞬、ぐるりーなは固まりました。そして我が耳を疑いました。
「えっと、もう一度いってください。」
「だから、ぐるんがココを辞めるんだよ。」
まだぐるりーなは信じられませんでした。
「どうして、突然引越しなんか…!」
「旦那さんの仕事に都合だそうだ。」
お父さんの顔を見てみました。真剣です。もう、信じないわけにいきません。ぐるりーなは泣きたいのをグッとこらえました。
「そうなんですか。」
ぐるりーなはかすれた声でなんとかそうこたえました。
「これだけだ。じゃあな。」
お父さんは、ぐるりーなの返事も待たないで帰ってしまいました。
お父さんがいなくなった途端、ぐるりーなの目から涙が出てきました。
――ゆういつの本当にあたしでいられる、ぐるんが…ゆういつの味方が…いなくなる?
ベットの中でぐるりーなは泣き続けました。
気がつくと、ぐるりーなは寝ていました。夢の中で、ぐるんと喋っていました。
目が覚めると、もう朝でした。お父さんの声がしました。ガチャッと音がすると、お父さんがいました。
「まだ寝てたのか。もうレッスンの時間だろう?」
お父さんの声でぐるりーなはガバッと起きあがりました。と、同時にお腹がぐ〜となりました。
「お父さま、お腹すいちゃいました。」
「でも、先にレッスンだ。いいか?」
「どうしてですか?優先するのはお腹の方でしょう?」
空腹だからか、寝ぼけているのか、ぐるりーなのいい子のお面がとれてしまいました。
「反抗するなんて珍しいな。でも、レッスンが先だ。昨日サボったんだからな!そりゃあ、レッスン優先だ。さ、行くぞ。」
「イヤだ!先、ごはん!」
「はあ…お前は王女なんだぞ?レッスンサボっていいもんか。」
「もうイヤになっちゃう。王女、王女って。あたし、まだ子どもなのよ?王女になんて、生まれたくなかった。」
ぐるりーなはついに本音をいってしまいました。
「なんだと!」
お父さんの怒りもマックスになってしまいました。
「そんなこという子はオレの子どもじゃない!出てけっ」
「ふん、こんなとこ出てってやるわよ!」
お父さんはドアをドンっと閉めていきました。
一方、ぐるりーなは気分がとてもいいかんじでした。ずっといいたかったことをいえて、スッキリもしました。でも、まずいことになりました。家を出なければなりません。とにかく、最低限の荷物を持って、窓から裏庭へ出ました。
そして、塀を飛び越えて、行くあてもなく歩きだしました。



