しばらく前を見たまま、歩いていった。女王がふりむくと、もうあまねたちの姿は見えなかった。にりすから貰ったドングリをぎゅっと握って、また前を向いて、再び歩きだした。女王には、これまで友だちというものがいなかった。いつも広ーい城の中で、1人でいた。もちろん、家来とは仲が良かったし、女王も家来が大好きであったが、それは家族のようなものだった。ずっと友だちというものが欲しくて、憧れていた。関西ズで出会った3人は、おそらく初めての女王の友だちだろう。一緒にホテルで話したり遊んだり、食事したり…。日に日に、女王とあまねたちは仲良くなっていた。だから、関西ズにいたいという気持ちがあった。だから犯人とノートが関西ズにあってほしかった。そうすれば、もうどこかへ行って探さなくてもいいから。でもどっちみち、女王は城へかえるので、3人と別れなくてはならなかった。それもそうだけど、最後の方は疲れていて、また1年も歩きたくなかった。だが、現実は違っていた。3人を寂しく思う気持ちと疲れとで、途中途中で寝込んでしまいそうだった。ある時、1つのことが浮かんだ。あのノートは誰でも書けるのだし、犯人が書いてくれているのでは?いやでも、紙きれにあんなことが書かれていたし、やっぱり両方見つけなくちゃならない。にりすのドングリから勇気をもらい、再び歩きつづけた。
 またもや1年もの年月をかけ、東の国「悪だん」へと着いた。
 雰囲気が関西ズとは真逆で、不良や犯罪者が多い町だ。
 国全体が薄暗く、あちこちにゴミが散らばっている。不良同士のケンカもそこら中で行っていた。さすがに、女王にケンカを売る者はいなかった。が話しかけてもニラんでおわりだったり、ムシするなど、中々話してもらえなかった。
 こんな国だが、ごく稀に良い者もいたりする。3人のグループの者たちは、話しかけると、応えてくれた。ネコ族のニャン、ピエロ族のピエロ、ト族の前男だった。ニャン元不良らしいが、2人は違うらしい。家がサーカス団でちょっと怖がりなピエロ、ともかくナルシストの前男。3人とも個性的で、女王は3人とも好きになった。しばらくの間、3人が住む家に泊めてもらうことになった。3人ともすぐに協力してくれると言ってくれ、とても助かった。これならすぐに見つかると思ったが、ここは別名「不良犯人都市」とも呼ばれている。優しい者は100に1しかいないほど、レアなのだ。女王が話しかけても、ムシやキレられることが多く、1週間もたたないうちに、女王のメンタルは崩れそうだった。 それでも、ニャンたちの励ましや、ドングリ、家来の慰めで、何とかやっていけた。3人と同じ家で暮らしていくうち、3人と女王は仲良くなった。中には、家来も3人と気が合う者もいて、女王はここも悪くないと思ってくるようになった。
 ただ、町全体が城と違いすぎて、長時間外にいると、吐き気がしそうだった。ずっと城にいたものだから、外の世界を知らなかった女王だが、この世界は想像より酷かった。歩くたび、ゴミ、タバコ、ケンカ…。いつかは見慣れるだろうと思ったが、1ヶ月いても慣れなかった。何1つ情報が得られず、そしてもう30分もキケンな国を歩いていて、そろそろヤバいかも、と思った時…。南の方に、あのノートを持っている者がいた!追いかけようとしたら、向こうに見つかってしまい、逃げられてしまった。もう女王の体力が持たないので、いったん家に戻ることにした。ソファーに座って、水を10口飲み、ようやく女王は復活した。一瞬、ノートを持った者が南に行ったことを思い出した。そして、急に立ち上がり、つぶやいた。
「南へ行かなくてはならないわ!ニャンさんたち、今までありがとう。また会いましょう!」
 3人は一瞬キョトンとして、すぐに寂しそうな表情になった。
「そうだな。いつかきっと、会おうぜ。」
「約束だよ、ぼくのハニー!」
「また、お会いしましょうね。いつでもトマト大好きクラブへ入るの、待ってます。」
 3人に手をふって、急いで出る支度をした。のんびりくつろいでいた家来たちを急かせて、悪だんを去った。