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『いやー菜乃ちゃんが見学来てくれて嬉しいよ!』

結局、流れに押し負けて私は体育館にいる

『プレイヤーは順調に集まってるんだけどなあ
な!!な!?崚行くん!』

「まぁ、自分はバスケ以外出来ないんで。」

『そんな事言って、中学の時から運動神経抜群ってきいてるよー!?』

『まぁ中学に関しては、身長のびて体がごつくなるのが早かっただけですね。』

昌先輩の調子に釣られない崚行くん、すごいなぁ、、、

『早速入部届も出してくれて、俺は非常に満足!!
じゃあ準備運動から行くか!
菜乃ちゃん、リラックスして見ていってね!』

「あ、はい!」

崚行くんはもう入部届出したんだ

良いなぁやりたい事が決まってて。

コートを眺めていると、昌先輩も崚行くんも生き生きとしていて、眩しいくらい輝いて見えた。

バスケのスピード感、ダイナミックさも相まって、呼吸を一瞬忘れるほど見入っていた。

すごい、、、、、。

昔兄がバスケをしていて、試合を見にいくのが好きだったことも思い出した。

そういえば、蒼也先輩いないのかな。

もう少ししたら来るのかな。

そんな事を考えていると

『菜乃ちゃん!!!!危ない!!!!!!!』

昌先輩の声が聞こえて、顔を上げた時にはボールがすごい勢いで向かってきていた。

当たる!!!

そう思った次の瞬間、ボールは別の方向に弾き飛ばされていて、目の前に大きな背中があった。

蒼也先輩だ、、、

『大丈夫?びっくりしたよね。』

振り返った先輩と目が合って、心がトクンと跳ねた

昌先輩も心配そうに駆けつけてくれた

『ナイスだな蒼也!菜乃ちゃん、ケガしてないか?』

「あ、はい。全然、、、何ともないです。」

『隣のバレー部のやつ!謝りにも来ないし、注意してくる!』

『昌、このボールも返しておいて。』

『おう!』


蒼也先輩が助けてくれなかったら、今頃顔がパンパンに腫れ上がってたかもしれない。

「私ボーッとしてて、、、
助けて頂いて、本当にありがとうございました」

お辞儀をして顔を上げて気づく

蒼也先輩ってこんな身長高かったんだ。

『昌が呼んでたけど、菜乃ちゃんって言うの?』

「あ、はい!」

『僕は蒼也。さっきの昌も同じ2年生。
猪突猛進だけど、良い奴だよ。』

確かに猪突猛進ですね、という言葉が喉まで出かけて、飲み込んだ。

「マネージャーさんって、2年目の先輩はいらっしゃらないんですか?」

何気なくそう質問した時、蒼也先輩の表情が強ばったように見えた。

『うん。そうだね、3年生の先輩だけかな。もうすぐ引退の時期だから、募集してる。』

それ以上は聞かないでね、

そんな雰囲気を感じ取って、思いつきで聞かなきゃ良かったと後悔した。

しばらく沈黙が続いて、シューズが床に擦れる音と、ボールが跳ねる音を聞いていた。

右側には蒼也先輩が壁にもたれていて、肩が触れそうな距離だった。

「先輩、、、、。あの。
私、マネージャーやりたいです。」

『えっ?』

自分でも自分の言葉に驚いたし、先輩も目を丸くしていた。

バスケの事、ほとんど何も知らないのに。

だけど、それ以上に

試合を見た時の胸の高鳴りを信じてみたかった。

平凡な日々からキラキラした世界に自分も入りたくて、

そして、蒼也先輩の悲しい顔の理由を知りたくなっていた。