今夜0時、輝く桜の木の下で

咲夜は袖で丁寧に涙を拭い、口元を隠した。

紺を見る目は、ほんのり赤く腫れていた。

「咲夜さん知ってる?」

そう言いながら、紺は地面に完全にあぐらをかいた。

「俺らの学校ってさ、めっちゃ嫌われてんの。多分咲夜さんが思ってるよりずっと」

紺は座ると、手についた砂を払った。

「バイトとかの面接は履歴書とか制服見た瞬間に返されるし、飲食店とか行っても嫌な顔されることのが多い」

咲夜は何も言わず、紺を見ていた。

赤く腫れていた目が、少しずつ落ち着いていく。

「咲夜さんが初めてだったんだよ。学校のこと知ってるのに嫌な顔しなかったの」

「そのことにも最近気づいたんだけどさ…俺正直最初は咲夜さんのことめんどくさい人かもって思ってたし」

「でも、気づいたらシローとキラと咲夜さんと一緒にいるの当たり前になってて」

「それで、その当たり前のことちゃんと考えたらさ、本当、咲夜さんに会えてよかったなーってなった。」

「「……」」

「あ、これで全部。聞いて欲しかったこと」

咲夜は顔を覆っていた手をゆっくり外した。

そのまま、うなだれる。

「あーもう、そっかぁ。ダメだ…自分」

「ダメじゃないよ」

「ダメだよ。大人なのに高校生の前で急に泣き出すとかさ…びっくりさせちゃったよね。ごめんね。」

「悪いこと何もしてないじゃん、謝らないでよ」

「でも」

「お願い。」

咲夜が顔をあげ、紺と再び目があう。

「咲夜さんが咲夜さんのことダメって言っても、なんて言っても好きだから」

「だから」

「これからも変わらず一緒にいて…」

紺は照れ臭くなったのか目を逸らし、言い切れなかった。

「ください」

そんな紺を見て、咲夜は少しだけ笑った。

「…紺くんだ」

「ん?」

「紺くんだなーって」

「なんだそれ」

その笑顔を見て、紺も安心したように笑った。

この日はいつも以上に空気が澄んでいて、

街灯がなければ星がいっぱい見えるような、そんな夜だった。