今夜0時、輝く桜の木の下で

「咲夜ちゃん、いらっしゃい。体調は大丈夫?」

昨日、姿を見せなかった咲夜を見て、キラの母さんが安心したように笑う。

「本当に試験で疲れてただけなんです。全然大丈夫です。ご心配おかけしました」

「本当? それならよかった」

母さんはほっと胸をなで下ろした。

「試験お疲れさまクッキー焼いたから、みんなで食べてね」

「嬉しいです。ありがとうございます」

「飲み物は何にする?」

「ハニーミルクラテで」

「はーい。持っていくから、キラたちのところで待ってて」

「ありがとうございます」

そう言って咲夜はカウンター越しにキッチンを覗き込んだ。

探している相手はすぐに分かった。

佐藤が視線に気付き、カウンターの方を振り向く。

咲夜が小さく会釈をすると、佐藤も軽く頭を下げ、そのまま作業へ戻っていった。

咲夜はいつものテーブルへ歩いてきて、紺の隣に腰を下ろす。

「もう大丈夫なんすか」

「うん。もう全然平気」

少し照れたように笑う。

「昨日は本当にみんなごめんね」

「咲夜さん、ごめん」

突然頭を下げたキラに、咲夜は目を丸くした。

「俺、咲夜さん病気なのずっと知らなくて……」

紺は思わずシローを見る。

シローは小さく首を横に振った。

そう言っているようだった。

「さっき、佐藤さんから聞いた」

「私が言ってなかったんだし、謝らないでよ」

「でもさ、紺とシローは最初から知ってたんでしょ」

「キラ……ごめ――」

「あーもう!」

紺の言葉を遮るように、キラは頭を抱えた。

「俺、本当察し悪くて嫌んなる」

「え?」

「二人とも何か俺に隠してんなってずっと思ってたんだよ。でもさ、人の病気のことなんて言えるわけないよな」

「俺は勝手に察しただけだけどね」

シローが苦笑する。

「二人がなんで急にタバコやめたのかも、さっきやっと分かったっつうか……」

キラはもう一度咲夜を見た。

「マジでごめん」

「だから、本当に謝らないでってば」

咲夜は困ったように笑う。

「キラくんが普通に接してくれてたの、嬉しかったんだよ?」

「……まじ?」

「うん」

キラは照れくさそうに頭をかく。

「いや、でもさ。これから気をつけることはちゃんと気をつけねぇとな」

そう言って、いつもの笑顔を浮かべた。

「みんなで、いっぱい遊びたいし」

「そうだね」

シローが笑って頷く。

その一言に、紺は自然と肩の力が抜けた。

「紺も、そうだよね」

シローに名前を呼ばれ、紺は笑って頷いた。