今夜0時、輝く桜の木の下で

次の日。

外が暗くなった頃、俺らが変わらずキラの家でたむろっていると、咲夜さんがやってきた。

なんとなく、元気がなさそうだった。

でも、具合が悪いわけでもなさそうだった。

「昨日ごめんね。連絡もしないで寝落ちとか……もうダメだね」

苦笑いを浮かべる咲夜さんに、キラが笑って返す。

「試験の後疲れるのなんて当たり前っしょ」

「確かにちょっと心配はしましたけど、連絡くださったし、何ともなくてよかったです」

シローがそう言うと、咲夜さんは少しだけ表情を和らげた。

「ありがとう」

……なんとなく。

いつもより、声に元気がない気がした。

「疲れ取れたんですか?」

「うん。寝落ちしたおかげで疲れは取れたかな。それで夜眠れなくなっちゃって」

少し照れくさそうに笑う。

「お散歩しちゃった」

「……一人で行ったんすか?」

「うん」

紺は思わず眉をひそめる。

「危ないって言ってるのに、なんで一人で出歩くんすか」

「大人だからだよ」

咲夜さんは悪びれる様子もなく笑った。


悪びれもなく笑う咲夜さんに、シローも苦笑した。

「咲夜さん。大人とはいえ女の人ですし、僕も一人は危ないと思いますよ」

「シローくんまでそんなこと言う?」

咲夜さんは肩をすくめる。

「ちゃんと明るい道だけ歩いたよ」

「それでも……あんま危ないことしないでほしいっすけどね」

そう言うと、咲夜さんが少しかがんで俺の顔を覗き込んできた。

目が合う。

「わかった。もうしないよ」

ふっと笑う咲夜さんに、少しだけ安心した。

「俺らが大人になったらみんなで深夜徘徊しよ! 楽しそうだし!」

キラがいつもの調子で言い出す。

「深夜徘徊は普通に迷惑行為です」

「え、そうなの?」

「そこ驚くところ?」

キラとシローのやり取りを見て、咲夜さんは吹き出しそうになるのを堪えていた。

その顔を見ていると、

ほんの少しだけ。

いつもの咲夜さんに戻ったような気がした。

少しだけ、元気になったような。

そんな気がした。