今夜0時、輝く桜の木の下で

「私、両親の好きなところというか、尊敬してるところがあるんです」

少しだけ間を置く。

「両親は、絶対に人のことを悪く言わないんです」

「小さい頃、保育園でおもちゃを取られて、泣いたことがあって。家に帰って、そのことを両親に話したんです」

「そしたら母が、“その子も遊びたかったんだよ。咲夜、独り占めしないで貸してあげられる子になろうね”って」

「私は、母と約束しました」

「小学校のとき、お気に入りの新しい鉛筆を持って行ったんです。少し目を離したら、なくなってて……誰かに盗られたんだって思いました」

「次の日、その鉛筆を持ってる子を見つけて。私のかって聞いたら違うって言われたんですけど、絶対その子だって思って」

「家に帰って父に話したら、“大切なものは学校に持って行かない。わかった?”って言われました」

「私は、父と約束しました」

「中学校のとき、落ちてた交換日記を拾ったんです。名前がなかったので、誰のか確認しようと思って、少しだけ中を見ちゃって」

「そしたら、そのページが嫌いな人ランキングで……一位から三位まで、全部、私の名前でした」

「そのまま、持ち主の机に返しました」

「家に帰って、そのことを話したら、“人のものを勝手に見るのは良くない”って言われて」

「……予想通りでした」

少しだけ息を吐く。

「高校生になって、気がついたら、目を合わせてくれる人がいなくなってて」

「学校に行きたくないって言ったら、“熱はあるのか?”って聞かれて。ないって答えたら、“じゃあ行きなさい。サボりはダメだ”って」

「それからしばらくして、具合が悪くて休みたいって言っても、同じことを言われました」

「そのあと、夜光症を発症して」

「病名がついたら、両親は“大丈夫?”って、心配してくれるようになって」

少しだけ言葉が途切れる。

「それで、両親は……私に優しくなりました」