今夜0時、輝く桜の木の下で

佐藤さんは、ゆっくりと口を開いた。

「新任の先生の不注意も、その人に準備を任せた人が確認をしなかったのも、気づかなかった試験監督の先生も悪いとも言える……し、」

言い淀む。

「し?」

「……確認しなかった本人が悪いとも言える」

「そうですよね。私もそう思います」

咲夜の表情は、どこか嬉しそうで、それでいて寂しそうでもあった。

「もう一個聞いてもいいですか?」

小さく頷く。

「今の質問を、私の両親にしたら、なんて答えると思いますか?」

「大学じゃない?」

「正解……簡単でした?」

「一般的な回答をしただけだよ」

「大変だったんですよ。母も父もすっごく怒っちゃってて……無事だったんだから良かったじゃ済まなくて」

咲夜は小さく息をついた。

「娘が倒れたんだから怒るのは当たり前だとは思うんですけど……」

そのとき、咲夜の手がわずかに震えた。

「気持ち悪いって思っちゃったんですよね」

「そっか」

「私、おかしいですよね」

「いわゆる一般的ではないかもしれないね」

「佐藤さんは、そんなことないよって言わないんですね」

「それ、結構便利な言葉だよね」

佐藤さんはカウンターに近づき、肘をついた。

「なんで気持ち悪いって思ったの?」

「興味ありますか?」

「うん。知りたい」

照明が反射して、咲夜の目がわずかに光った。