紺は駆け寄り、男の腕を掴んで声をかけた。


「何してるんすか?」


紺の顔を見るなり、その男は女性の腕を離し、紺を振りはらって走って逃げていった。


「この辺人通り少ないし、ああいうキモいおっさんとかいるから夜は来ないほうがいいっすよ。」


「う、うん……ありがとう」


女性は、長い髪に色白の肌を持つ――いわゆる美人の部類に入る人だった。


「ところでさ……」


彼女は紺をじっと見つめながら言った。


「君も出歩いてちゃ、まずくない? 高校生でしょ?」


紺は、めんどくさい人に関わってしまった――そう思った。