今夜0時、輝く桜の木の下で

シローがふと、思い出したように口を開いた。

「紺さ、いつから咲夜さんのこと好きなの?」

あまりにも唐突な一言だった。

コーラを飲んでいた紺は、盛大にむせた。

「え、紺、咲夜さん好きなの?」

キラが目を丸くする。

「キラ気づいてなかったの? こんなわかりやすいのに」

シローは呆れたように肩をすくめた。

「急に何言ってんだよ」

紺は慌てて言い返す。

「違うの? ツッコミどきかなと思って」

「全然、そんなんじゃないから。やめろよ」

否定は早かったが、どこか落ち着かない。

「紺、耳赤くね?」

キラが身を乗り出す。

「珍しいね、キラが鋭い」

シローがくすっと笑う。

紺は反射的に耳を手で隠した。

「別に恥ずかしがることじゃないと思うけど」

「そうだよ」

シローに乗っかり、キラがやたら前のめりになる。

「いや、だから本当そんなんじゃないんだって」

紺は視線を逸らしたまま言った。

「そんな否定すること? 咲夜さんいい人だし、めっちゃいいと思うけどさ」

キラは首をかしげる。

「付き合いたくないの?」

シローが淡々と重ねる。

「……うん。そう言われても、しっくりこないっつーか」

少し間を置いて、紺はそう答えた。

「なるほど、そうなっちゃうんだ……」

シローが小さく呟く。

「え、わかんない。どういうこと?」

キラはますます混乱していた。

「咲夜さんはどうなんだろ……」

シローは一人で考え込むように、ぼそぼそと呟く。

そんなシローの肩を、キラが掴んで揺らした。

「もうぶつぶつ言ってないで教えてよ」

「要するに」

シローは顔を上げた。

「紺の精神年齢は園児ってこと」

「は?」

紺が即座に反応する。

「確かに! 紺、ずっと変わんないわ」

キラが妙に納得したように頷いた。

「キラ、多分ちょっと違う」

シローは少し呆れたように言う。

「……もうこの話終わり。面白がる話題じゃねぇ」

紺が、少しだけ声を強めた。

「別に面白がってるわけじゃないし、紺に彼女作ってほしいとか、そういう話じゃない」

シローは真面目なトーンで続ける。

「紺にとって咲夜さんがどんな存在なのか、一回ちゃんと考えてみた方がいいと思うよ」

「……シローはさっきから何が言いたいの?」

紺は視線を逸らしたまま聞く。

シローは少しだけ間を置いてから、静かに言った。

「咲夜さんと、俺たちは一緒?」

その一言で、紺の表情がわずかに固まる。

言いたいことは、伝わっていた。

「そんなん、もう同じくらい仲良いよな?」

キラには、伝わっていなかった。