店の外はもう暗く、夜の風が少し冷たかった。


二人は並んで店の壁にもたれ掛かり、タバコに火をつけた。


「紺、そんなにあの佐藤さんって人嫌い?」


煙を吐きながら、シローが静かに尋ねる。


「……わかんないけど、なんか気に食わないんだよな」


紺が吐いた煙がゆっくりと空に溶けていく。


「咲夜さんも嫌がってなさそうだったし、そんなに気にしなくて良さそうだけどね」


「そうだけど……もう、生理的に無理なんかな」


「辛辣だなぁ」


シローが笑うと、余計に紺は黙り込んだ。


少し間を置いて、シローが言った。


「紺ってさ、なんで咲夜さんのこと気になるの?」


「急に何?」


「前に“NLHS”のこと、俺に聞いたでしょ? あれ、咲夜さんのことだよね?」


紺はタバコを口に運ぼうとしていた手を止めた。


「……」


「紺が、他人──しかも一回しか会ってない人に興味持つの、珍しいじゃん。だから、なんでかなって」


「咲夜さんのこと、キラは?」


「キラは気づいてないと思うよ。でも、隠されるのは嫌いだろうね」


「……咲夜さんに話していいか聞いてみる」


「うん。ダメだったら、僕も知らないフリする」


シローは灰皿にタバコを押し付け、火を消した。


「ありがとう…シローってさ、周り見えててすごいよな」


紺の思いがけない言葉に、シローは一瞬だけ目を丸くした。


そのあと、灰皿に視線を落とし、小さく笑う。


「すごいのは紺だよ」


風が吹き、シローの声は流された。


「ごめん、なんて言った?」


「なんでもないよ」


シローはいつもと変わらない紺の顔を見て、ほっとしたように笑った。


さっきの話の続きは今度聞こうとシローは心の中で思った。