勉強会のあと、シローがLINEをくれた。


NLHSについて書かれたサイトのリンクと、


難しいところをわかりやすくまとめたメッセージが添えられていた。


自然光過敏症候群(NLHS:Natural Light Hypersensitivity Syndrome)――
通称「夜光症」。

自然光に含まれる特定の波長に体が過敏に反応してしまう、稀な疾患。
日中に太陽光を浴びるだけで、頭痛や吐き気、全身の倦怠感、
皮膚の灼熱感といった症状が出る。
けれど、人工の光や月明かりの下ではほとんど問題がなく、
夜は自由に動ける。


紺はその文を思い出しながら、ゆっくりと口を開いた。


「咲夜さんは、夜光症で――」


咲夜が目を見開く。


スプーンをそっと、お皿に立てかけてテーブルに置いた。


夜光症には、もう一つ特徴がある。


桜の花弁には微細なクチクラ層があり、
月光や街灯のような弱い光を受けると光を乱反射して、
青から緑の波長を散らす。
NLHSの患者は、その微弱な反射光を網膜で増幅してしまうため、
暗闇でも、花びらが自ら光っているように見えるのだ。


紺は、静かに咲夜を見つめた。


「俺と初めて会った日、あの場所で――桜、見てたんですよね」