縁が無かったから離婚したのに(3K)元旦那と周りがうるさくて困ってます。優秀脳外科医の頭の中をのぞきたい


◇◇


「葛城さん、配架整理頼める?」

「はい!分かりました」

パソコンを閉じてカートに乗せられた返却本を整理に向かう。
自分の本は片付けられないのに図書館の本は別物。

あれだ!
スイーツは別腹的な?

「景色最高」

勤めさせて貰って二週間。
桜は散り新芽の季節。
新芽の色づくこの季節も中々良い。
カートを押しながらゆっくりと夏の始まりを告げる樹々を見ながら歩く。

「まずは…ここからか」

返却された本を【日本十進分類法】に基づいて並べかえる。
日本の図書館で本を分類する手法で1~9の数字を用いて主な題材となる知識を分類する。

「早めにやっておけば後が楽」

多分棚卸作業で全部の本の確認が必須。
どうせやる事だからちょこちょこと。

「この図書は1っと、これ6だし」

元あった場所に返却すのは推奨なだけでそれを閲覧者に求めるのは違う。
次読む人への思いやり次第。
こんな私でも本絡みになると心が広いのだ。

「あれ、これは5]

数万冊もある開架書(一般図書)を確認するのは骨が折れる。
受付に戻れば新規登録する本が山のように待ち受けてる。

(今日は返却本だけにするか…)

一冊の本が目に入り手にとった。

「懐かしい…何度も読んだっけ」

高校時代に図書室で読んだ本に心臓が高鳴る。

「紅ちゃん!」

またか…

「やめて下さい…」

背後から掛けられた声と肩に回された手に冷たく言い放つ。

「どうした?アンニュイな雰囲気出して」

「青山さん…セクハラですか」

肩に回された手をバシッと叩いた

「痛いな〜」

そんなに痛くもないくせに大袈裟。

「自分で治せば良いでしょ」

医者なんだから。

「自分で自分を治せるほど名医ではないからね」

「へぇ–」

「また、興味ない返事–!」

「今日も暇つぶしですか?」

ほぼこの人は毎日図書館に来る。
チャラチャラして軟派だけど医者としては優秀らしい。

「紅ちゃんを借りに来た」

はい…出ました
毎回のお約束

「葛城は禁書なので貸出不可です」

これも毎回のお断りの言葉

「いつになったら貸出可能?」

また懲りずに棚に手を置き私を通さない。

「100年後に来て下さい」

「100年って…おれ生きてないよ」

生きてそうなほどの性格ですが…

「大丈夫です。私も生きてないんで」

腕をすり抜けてまたカートを押し次のコーナーへ。
まあ、彼がこれで諦めるとは思えない。

「うわっ」

次のコーナーの本を手に取ると隙間から笑顔の青山さんの顏。

「なんですか…本当に警備の人呼びますよ」

本と本の間から顏なんてホラーだよ…

「デートしてくれるならやめる」
「嫌です」
「来週の土曜日!俺、非番なんだよねー」
「来週は予定あります」
「えーっ。まさか…塩谷とデー」

最後まで聞く必要なし。
本を置いて顏を抹殺。

「第3土曜日か…何役するんだろ」

星名図書館では第3土曜日に本をもっと楽しもうをコンセプトに“親子ふれあい広場”と言う催しをするらしい。
職員はその日全員参加と聞いてる。

「だから、誰とデートするの?」

「しませんし。青山さんには」
「関係ないよな」

そうそう関け…い

「塩谷も関係ないだろ」

「あぁ、内科の青山先生だったんですね。最近噂ですよ、紅のストーカーが居るって」

そんな噂が?
だから一定の職員が私をシカトするのか。
それより…

「塩谷先生は何かお探しですか?」

出来るだけ普通に言う。