「な…んでいるの?!」
「術後の確認と紅に仕事の話を持ってきた」
「頂きます」と両手を合わせてお味噌汁を口に運んだ。
「お母さん、お姉さん、美味しいです」
この外面が老若男女問わず人気のあるとこ。
「まあ!嬉しい。ねぇ、愛ちゃん」
「ですねー!たくさん食べて」
母喜びすぎ…
愛さんもめっちゃ嬉しそう…
「いつでも食べにくれば良い!なあ、圭太」
「毎日来いよ!紅も大人しくなるし」
「ありがたいです」
三人で談笑…
(…みんな騙されてる)
クソ親父とバカ兄‼
一番の原因の京祐も京祐だよ!
普通、別れた嫁の実家に来れる?
来れないですよね?
離婚を切り出したのアナタなんですけど?
バカと天才は紙一重…先人はドンピシャな言葉を残したもんだわ。
「術後の確認て担当じゃないでしょ。仕事も頼んだ覚えないんだけど」
食欲が失せて箸をおいた。
「俺が頼んだんだ!お前は…本当に…黙って京祐君に付いていけ」
大人しく新聞読んでたくせに今は新聞の“し”の字もない。
「こんなのおかしい…つか、京祐にくす、痛ッ」
クソ親父にテーブル下から足を蹴られて「薬盛られたんじゃない?」と言わせて貰えない。
「とにかく一緒に行って仕事を紹介して貰ってこい!これはお前への頼みでもお願いでもない!命令だ‼」
ちゃぶ台ならぬテーブルをひっくり返す勢いの父。
「どうしてよ!京祐もそんな暇ないでしょう?!婚や、痛ッ!」
今度は隣から脇腹をつままれて「婚約者いるくせに」と言わせて貰えない。
「まだ打撲の後遺症があるかも知れないな。紅、食べたら病院行こう」
「だから…」
のんびりと箸をすすめる京祐に言葉を発そう物なら怒り狂った父がテーブルをひっくり返しかねない。
「分かった…」
父より母の笑みを浮かべた圧に負けたのは言う間でもない。
「本当に病院に連れて行く気?」
「相変わらず喧嘩売ってくるよな…当直終わりなんだ。少し寝るから着いたら起こして」
「だったら来なきゃ…もう寝てる」
私のことなんて無視。
タクシーの運転手に“星名総合病院に”とだけ言って腕を組み静かに寝てしまった。
喧嘩っ早い私と勝ち負けなんてどうでも良い京祐。
変わらないのは京祐も同じ。
「寝顔も変わらないな…」
コクリコクリと頭が揺れてる。
「今日だけだからね」
口ではブツブツ言いながらも疲れた寝顔が懐かしくて京祐の頭を優しく私に寄せた。
◇
「何で寝るかな…」
俺の肩に頭を乗せた元嫁が可愛くてギュッと抱きしめたくなる。
「ホント…困る」
タクシーの運転手の視線が痛くて身体を揺すると「ん…」と声にならない声を出してくる。
まじでコイツは昔から…
「紅、起きろ」
本当は起こしたくない。
でも起こさないと運転手に紅の寝顔を見られる…
それは許せない。
「紅、起きて」
紅は昔から寝起きが悪い。
そういうとこも変わってない。
「ん…ごめん…京祐、寝ちゃった」
可愛すぎるだろ?
高校時代から変わらない可愛いさと美しさを兼ね備えてる。
言い過ぎと人に言われようが関係ない。
「起きろ。降りるぞ」
口から出る言葉と行動は思いと真逆で冷たく接してしまう。
ずっと前から…俺は紅に拗(こじ)らせ中。
「ほら、行くよ」
先に降りて手を出すと紅は眠そうにちょこんと手を乗せてゆっくり降りた。
寝起きは悪いけどこんな風に行動は素直。
喧嘩っ早いとこもない。
「京祐、離して良いよ」
俺に乗せた紅の手が離せない。
何もかもに真っ直ぐで病院すら逃げ出す破天荒さも可愛い。
「あぁ」
名残惜しいけど離す。
“…どうして病院を逃げだした?”
聞いたら逃げてしまいそうで聞けない。
(俺こんなに憶病だったか?)
手術はここをこうすればとか分かりやすいのに…紅が何を考えてるか分からない。
喧嘩越しでも近くに居てくれるならそれで良い。
こんな風に考える俺って…
「ドMなのか…?」
ボソッと呟いて隣の紅を見るとクルっとした大きな瞳で「ん?えむ?ポエム?」と眉を寄せてる。
「ここ痕付いてるぞ」
頬に触れると何とも言えない柔らかさにまた抱きしめたい衝動に駆られる。
「触んないで。でも…どこ?取れた?伸ばすしかないかな…」
触れた手を叩かれたけど痛くも痒くもない。
「まだ付いてる」
わざと大げさに言うと顔を赤らめ必死に伸ばそうとする。
そんな痕がすぐに取れるわけないのに戻そうと考えるとこが…
「相変わらずバカだな」
訳:(変わらず俺をバカにしてしまうほど可愛い)
正直に言えずムッとされ俺は無表情を装い心の中で“ごめん”と謝った。
「術後の確認と紅に仕事の話を持ってきた」
「頂きます」と両手を合わせてお味噌汁を口に運んだ。
「お母さん、お姉さん、美味しいです」
この外面が老若男女問わず人気のあるとこ。
「まあ!嬉しい。ねぇ、愛ちゃん」
「ですねー!たくさん食べて」
母喜びすぎ…
愛さんもめっちゃ嬉しそう…
「いつでも食べにくれば良い!なあ、圭太」
「毎日来いよ!紅も大人しくなるし」
「ありがたいです」
三人で談笑…
(…みんな騙されてる)
クソ親父とバカ兄‼
一番の原因の京祐も京祐だよ!
普通、別れた嫁の実家に来れる?
来れないですよね?
離婚を切り出したのアナタなんですけど?
バカと天才は紙一重…先人はドンピシャな言葉を残したもんだわ。
「術後の確認て担当じゃないでしょ。仕事も頼んだ覚えないんだけど」
食欲が失せて箸をおいた。
「俺が頼んだんだ!お前は…本当に…黙って京祐君に付いていけ」
大人しく新聞読んでたくせに今は新聞の“し”の字もない。
「こんなのおかしい…つか、京祐にくす、痛ッ」
クソ親父にテーブル下から足を蹴られて「薬盛られたんじゃない?」と言わせて貰えない。
「とにかく一緒に行って仕事を紹介して貰ってこい!これはお前への頼みでもお願いでもない!命令だ‼」
ちゃぶ台ならぬテーブルをひっくり返す勢いの父。
「どうしてよ!京祐もそんな暇ないでしょう?!婚や、痛ッ!」
今度は隣から脇腹をつままれて「婚約者いるくせに」と言わせて貰えない。
「まだ打撲の後遺症があるかも知れないな。紅、食べたら病院行こう」
「だから…」
のんびりと箸をすすめる京祐に言葉を発そう物なら怒り狂った父がテーブルをひっくり返しかねない。
「分かった…」
父より母の笑みを浮かべた圧に負けたのは言う間でもない。
「本当に病院に連れて行く気?」
「相変わらず喧嘩売ってくるよな…当直終わりなんだ。少し寝るから着いたら起こして」
「だったら来なきゃ…もう寝てる」
私のことなんて無視。
タクシーの運転手に“星名総合病院に”とだけ言って腕を組み静かに寝てしまった。
喧嘩っ早い私と勝ち負けなんてどうでも良い京祐。
変わらないのは京祐も同じ。
「寝顔も変わらないな…」
コクリコクリと頭が揺れてる。
「今日だけだからね」
口ではブツブツ言いながらも疲れた寝顔が懐かしくて京祐の頭を優しく私に寄せた。
◇
「何で寝るかな…」
俺の肩に頭を乗せた元嫁が可愛くてギュッと抱きしめたくなる。
「ホント…困る」
タクシーの運転手の視線が痛くて身体を揺すると「ん…」と声にならない声を出してくる。
まじでコイツは昔から…
「紅、起きろ」
本当は起こしたくない。
でも起こさないと運転手に紅の寝顔を見られる…
それは許せない。
「紅、起きて」
紅は昔から寝起きが悪い。
そういうとこも変わってない。
「ん…ごめん…京祐、寝ちゃった」
可愛すぎるだろ?
高校時代から変わらない可愛いさと美しさを兼ね備えてる。
言い過ぎと人に言われようが関係ない。
「起きろ。降りるぞ」
口から出る言葉と行動は思いと真逆で冷たく接してしまう。
ずっと前から…俺は紅に拗(こじ)らせ中。
「ほら、行くよ」
先に降りて手を出すと紅は眠そうにちょこんと手を乗せてゆっくり降りた。
寝起きは悪いけどこんな風に行動は素直。
喧嘩っ早いとこもない。
「京祐、離して良いよ」
俺に乗せた紅の手が離せない。
何もかもに真っ直ぐで病院すら逃げ出す破天荒さも可愛い。
「あぁ」
名残惜しいけど離す。
“…どうして病院を逃げだした?”
聞いたら逃げてしまいそうで聞けない。
(俺こんなに憶病だったか?)
手術はここをこうすればとか分かりやすいのに…紅が何を考えてるか分からない。
喧嘩越しでも近くに居てくれるならそれで良い。
こんな風に考える俺って…
「ドMなのか…?」
ボソッと呟いて隣の紅を見るとクルっとした大きな瞳で「ん?えむ?ポエム?」と眉を寄せてる。
「ここ痕付いてるぞ」
頬に触れると何とも言えない柔らかさにまた抱きしめたい衝動に駆られる。
「触んないで。でも…どこ?取れた?伸ばすしかないかな…」
触れた手を叩かれたけど痛くも痒くもない。
「まだ付いてる」
わざと大げさに言うと顔を赤らめ必死に伸ばそうとする。
そんな痕がすぐに取れるわけないのに戻そうと考えるとこが…
「相変わらずバカだな」
訳:(変わらず俺をバカにしてしまうほど可愛い)
正直に言えずムッとされ俺は無表情を装い心の中で“ごめん”と謝った。



