縁が無かったから離婚したのに(3K)元旦那と周りがうるさくて困ってます。優秀脳外科医の頭の中をのぞきたい

「消えたわ」

5時間の手術でランプはやっと消えた。
ドアが開き看護師さんとストレッチャーに乗せられた父の姿に駆け寄る。
少し青白いけど口元の呼吸マスクで息をしてるのが分かる。

「さがって下さい」

看護師さんから言われ母はストレッチャーを追いかけて行く。

「京祐!?」

もう一度開いたドアから白衣に着替えた京祐が出て来た。

「一応ICUで今日は様子を見て術後症状が安定してたら一般病棟に移します。命に別状は無いですが意識を取り戻して何らかの後遺症などは検査します」

父は頭を強打してる。
後遺症が残る可能性だってある。

「俺が担当したんで大丈夫ですよ」

口角を上げた京祐の表情は自信のある証拠。

「よろしくお願いします」と皆んなで頭を下げその場を去る京祐の姿に誇らしさを覚えた。



「うちに泊まれば良いのに…」

愛さんの申し出を断って自宅に帰ってきた。
ウエディングドレスのままで仏間で正座をして祖父と祖母の遺影を眺め仏壇に手を併せた。

「良かった…」

母は病院に居ると聞かず兄も付き合う事にした。
久しぶりの一人の実家は少し寂しい。
いつもうるさい父が居ないだけでも静かな居間。


ーピンポーン


ウエディングドレスのまま立ち上がり玄関に向かった。

「寂しいかと思って」

玄関を開けると微笑む京祐の姿。
何だろう身体能力と精神面は強い私なのに。

「どうした?」

戸惑う京祐を私はギュッと抱きしめた。





“あのウエディングドレスはなんだったんだ?”

術後のカンファレンス中に何度か頭を過った。
その後お母さんとお兄さんに会ってオペの内容とこれからの事を話して俺は自宅ではなく紅に会いに来た。

ギュッと抱き着いてくる紅は可愛いけど…まだこれ着てたのか。

「凄く似合ってるけどこれどうした?」

リビングのソファに座りまだウエディングドレスのままの紅はお茶を出してくれる。

この状況が笑えてフッと声に出てしまった。

「笑うことないでしょ?今日は大変だったんだから!」

お父さんの事がとくに堪えたんだろう。
喧嘩はするくせになんだかんだで仲が良い親子。

「ごめん。それは青山と再婚でもするのか?」

自分でも嫌になる意地の悪い言葉。

「再婚するわけない!これだって妹さんの結婚の試着を私が頼まれて」

実はここに来る途中で青山から全部聞いていた。
だからこれは紅の態度を見たい俺の拗らせ。

「そっか。でも青山と一緒だったんだもんな」

「それは色々なことのお礼で」と真っ赤な顏の紅が可愛くてたまらない。

「お礼か…」

「それ…あの図書館で倒れた時心配させて…なのにあんな態度しちゃってそれに今日も」

今日なんてウエディングドレスであの会場に登場だもんな。
破天荒と言うか無茶と言うか…

「本当…可愛い」

「えっ?]