縁が無かったから離婚したのに(3K)元旦那と周りがうるさくて困ってます。優秀脳外科医の頭の中をのぞきたい

「ごめん。ありがとう」

「すっすみ…ヒクッ」

「紅、大丈夫。過呼吸起こすぞ」

私の背中に回された手が優しくて落ち着いてくる。

「おーーい。やっぱりここだった!タクシー捕まったぞ」

青山さんが手を振り「こっち」と先導する。

「貸しだからな」

青山さんは言うけど、

「借りになると思うけど?後で連絡する」

貸し借りの話をさっさと切り上げ手配してくれたタクシーまで急ぐ。

「京祐、私も走るから。重いでしょ?」

京祐に抱きかかえられたままの私。

「裸足だろ。このドレスの理由…後で聞くからな。まずは」

「星名総合病院まで」と運転手に告げて私と京祐は乗り込んだ。



「紅はお母さん達と待ってて」

病院に着いて京祐はすぐオペ室とは別の部屋に入っていった。

父は頭部損傷で出血はあるけど意識はあるらしい。
だからと言って安心ではない。

「大丈夫かな…」

タクシーの中でも私を抱きしめ右手は電話で父の状態確認とオペの出頭を申し出て
左手で私を優しく擦ってくれた。

「まさか京祐が手術してくれるなんてな」

普通は身内の手術はしないらしい。
亡くなった場合を考えると事件性の疑いも出て警察沙汰になりかねないから。

「離婚してたことが良い結果を生むとはなー」

兄の言葉に皆んなで笑う。
母も兄も愛さんも安心してる。
本当なら簡単に手術をして貰える人じゃないんだろう。

「しかし」

兄は眉間にシワを寄せ

「本当、しかし…ね」

母は困惑顏。

「どうしたの?その格好」

愛さんがやっと“しかし”の意味を言葉にした。

“ウエディングドレス”そりゃ皆んな驚きますよね…

「これは青山さんの妹さんので」

試着の代理でと説明をした。
ドレスは京祐が抱き上げてくれたおかげで汚れは免れてる。

「そのドレスで病院に来た時はあの映画みたいだったわ~」

母は安心したのか落ち着き顔色は戻って目を閉じてる。

あれか…ラストに教会に花嫁を奪いにくるやつ。
昔の洋画だからあのラストはセンセーションだった。

「あれとは違うわよ」

ボソっと呟いて手術中の赤いランプを見つめた。

あのホテルのあのタイミングなんてある?
妹さんの結婚は嘘ではないけど…ドレスの試着なんて日にちは変えられるよね?

「やっぱり、澪さんと青山さんって」

それなら私がシンポジウムの会場に走ったのはある意味良かったのかも。