処分なんてどうでも良い。
そんなことより…
この間の澪さんの顏が忘れられない。
「あの後凄かったのよ。塩谷先生」
京祐が手術終わりに会場に来て冷静さを失ってたのは他の職員さんから聞いた。
「そうですか。主任はもしかして私達のことを」
「知ってるわ。塩谷先生はこの図書館が出来るのをインターン時代から楽しみにしてたもの」
医学部卒業して二年目に私達は結婚した。
「この図書館が出来たら妻を絶対推薦するって。あの冷静な塩谷先生が貴方の事となると熱くなっちゃって」
「ははっ、そんなこと言ってたんですか」
妻とか話してたなんて知らなかった。
「結婚して指輪をはめて来た時はどれだけの女の子が泣いたことか」
そうだよね。
医者でイケメンでこれからお近づきになりたいと思った矢先に突然の嫁を感じさせる指輪。
でも…
「意外でした。うちで指輪を見たことなかったので」
唯一見たのは指輪を選びに行ってサイズを測った時くらい。
「外してる時はネックレスに通してたわね」
身体を見たことがないからネックレスに通した指輪の存在なんて知らないはずだ。
「いつも胸元触るのよ。あれは指輪を触る癖ね」
うちらは三年前に終わってる。
私なんて指輪の有無も分からなくなってる。
「塩谷先生と話してみた?貴方をここに推薦する時だって一生懸命だったのよ。婚約の話も何か理由があると思うけど」
いつも優しい目をしてる主任の目が一段と優しい。
「お話ありがとうございます。でも今さらです…物語のようには行かない」
小説の世界とは違う。
現実はもっと複雑で先は見えない。
「自分の物語でしょ?動かなきゃ話は進まないわ。でもまずは彼にもお礼を言うべきじゃない?」
何が本当で嘘か分からない。
「少し考えてみます」そう答えるしかなかった。
◇◇
「あれ、お父さんはー?」
「最近忙しいのよ。裏の方の仕事に行ってるわよ。工期が遅れてるって」
裏…はいはい新築一戸建ての豪邸ね。
外は雨が降り出しそうだから出来るだけ進めに行ったんだろう。
「あれ、兄貴が設計でしょ?」
冷蔵庫からペットボトルのオレンジジュースを直飲みしようとして母に頭を叩かれた。
「圭太のお友達のお家よ」
でもあの土地って…
「あれ売ったの?!私の遺産にするって言ってたじゃん‼」
私を可愛がってた祖父母が生前言ってた話。
勝手に売るなんて酷い。
「あんたに必要ないでしょ?勝手に離婚したんだし。この家だけで十分」
何も言えません。
老後はこの家で過ごせば良い。
「事務所にこれ持って行って」と言われ回覧板を渡された。
うちの右隣は兄貴と愛ちゃんの家。
左隣は曾祖父の代から続く葛城工務店の事務所で父は生粋の大工。
兄貴は一級建築士で愛さんは事務担当。
「愛さーん。これ持って来た」
「ありがとう。紅ちゃん、ちょうど良かった。これ食べない?」
冷蔵庫から出して来たのは最近話題の有名スイーツ店“天水のシャインマスカットゼリー”
確か一個1000円はするって聞いた。
「あら珍しい子が来てる」
「こっちに私が来ることないもんね」
パートの駒田(こまだ)さんの隣に座ってエアコンの風を堪能する。
駒田さんは祖父の時から事務をやってるベテランさん。
「昔はよく来てたのに。まぁ仕方ないけどね…」
祖父は私が小学校の時に足場から落ちて亡くなった。
それ以来、この場所や現場は嫌い。
あんなクソ親父でも何があるか分からないから。
「そんなことより聞いたわよ!イケメン脳外科医の話!再婚するの?おばちゃん楽しみで」
どこぞのドラマと間違ってない?
それか流行り物の漫画か小説家?
「何もないよ。おばちゃん夢見過ぎだって」
あれから京祐とは会ってない。
お礼も言えてない。
「駒田さん、紅ちゃんには別の良い人いるのよねー?」
「そうなの?どんな人?」
「内科医ですって。この人もイケメンだったわ」
あぁ…青山さんか。
家まで送ってくれた時に愛さんも居たしな。
「それも違いまーす。私はずーっとここで暮らすの!おばちゃんの最後を看取って上げる」
「私はまだお迎え来ないわよ!もう顔は可愛いのに口は悪いんだから!誰に似たのかね」
おばちゃん…祖母の写真見すぎ。
まあ同級生で喧嘩友達だったからね。
そんなことより…
この間の澪さんの顏が忘れられない。
「あの後凄かったのよ。塩谷先生」
京祐が手術終わりに会場に来て冷静さを失ってたのは他の職員さんから聞いた。
「そうですか。主任はもしかして私達のことを」
「知ってるわ。塩谷先生はこの図書館が出来るのをインターン時代から楽しみにしてたもの」
医学部卒業して二年目に私達は結婚した。
「この図書館が出来たら妻を絶対推薦するって。あの冷静な塩谷先生が貴方の事となると熱くなっちゃって」
「ははっ、そんなこと言ってたんですか」
妻とか話してたなんて知らなかった。
「結婚して指輪をはめて来た時はどれだけの女の子が泣いたことか」
そうだよね。
医者でイケメンでこれからお近づきになりたいと思った矢先に突然の嫁を感じさせる指輪。
でも…
「意外でした。うちで指輪を見たことなかったので」
唯一見たのは指輪を選びに行ってサイズを測った時くらい。
「外してる時はネックレスに通してたわね」
身体を見たことがないからネックレスに通した指輪の存在なんて知らないはずだ。
「いつも胸元触るのよ。あれは指輪を触る癖ね」
うちらは三年前に終わってる。
私なんて指輪の有無も分からなくなってる。
「塩谷先生と話してみた?貴方をここに推薦する時だって一生懸命だったのよ。婚約の話も何か理由があると思うけど」
いつも優しい目をしてる主任の目が一段と優しい。
「お話ありがとうございます。でも今さらです…物語のようには行かない」
小説の世界とは違う。
現実はもっと複雑で先は見えない。
「自分の物語でしょ?動かなきゃ話は進まないわ。でもまずは彼にもお礼を言うべきじゃない?」
何が本当で嘘か分からない。
「少し考えてみます」そう答えるしかなかった。
◇◇
「あれ、お父さんはー?」
「最近忙しいのよ。裏の方の仕事に行ってるわよ。工期が遅れてるって」
裏…はいはい新築一戸建ての豪邸ね。
外は雨が降り出しそうだから出来るだけ進めに行ったんだろう。
「あれ、兄貴が設計でしょ?」
冷蔵庫からペットボトルのオレンジジュースを直飲みしようとして母に頭を叩かれた。
「圭太のお友達のお家よ」
でもあの土地って…
「あれ売ったの?!私の遺産にするって言ってたじゃん‼」
私を可愛がってた祖父母が生前言ってた話。
勝手に売るなんて酷い。
「あんたに必要ないでしょ?勝手に離婚したんだし。この家だけで十分」
何も言えません。
老後はこの家で過ごせば良い。
「事務所にこれ持って行って」と言われ回覧板を渡された。
うちの右隣は兄貴と愛ちゃんの家。
左隣は曾祖父の代から続く葛城工務店の事務所で父は生粋の大工。
兄貴は一級建築士で愛さんは事務担当。
「愛さーん。これ持って来た」
「ありがとう。紅ちゃん、ちょうど良かった。これ食べない?」
冷蔵庫から出して来たのは最近話題の有名スイーツ店“天水のシャインマスカットゼリー”
確か一個1000円はするって聞いた。
「あら珍しい子が来てる」
「こっちに私が来ることないもんね」
パートの駒田(こまだ)さんの隣に座ってエアコンの風を堪能する。
駒田さんは祖父の時から事務をやってるベテランさん。
「昔はよく来てたのに。まぁ仕方ないけどね…」
祖父は私が小学校の時に足場から落ちて亡くなった。
それ以来、この場所や現場は嫌い。
あんなクソ親父でも何があるか分からないから。
「そんなことより聞いたわよ!イケメン脳外科医の話!再婚するの?おばちゃん楽しみで」
どこぞのドラマと間違ってない?
それか流行り物の漫画か小説家?
「何もないよ。おばちゃん夢見過ぎだって」
あれから京祐とは会ってない。
お礼も言えてない。
「駒田さん、紅ちゃんには別の良い人いるのよねー?」
「そうなの?どんな人?」
「内科医ですって。この人もイケメンだったわ」
あぁ…青山さんか。
家まで送ってくれた時に愛さんも居たしな。
「それも違いまーす。私はずーっとここで暮らすの!おばちゃんの最後を看取って上げる」
「私はまだお迎え来ないわよ!もう顔は可愛いのに口は悪いんだから!誰に似たのかね」
おばちゃん…祖母の写真見すぎ。
まあ同級生で喧嘩友達だったからね。



