縁が無かったから離婚したのに(3K)元旦那と周りがうるさくて困ってます。優秀脳外科医の頭の中をのぞきたい

「紅ちゃん大変だな…」

最近は周りの目を考える行動をとってくれる青山さんは相談相手になりつつある。
ちなみに好意はないです!

担当…着ぐるみ(葛城)と書かれた印刷物を握りしめる。

「俺がやろうか?」

身長が高い着ぐるみ…怖すぎる。

「やりますけど…」

先日着ぐるみを初めて見たけど…

「これ、めっちゃダサいよな」

星型の頭になぜ着物きてる?
加藤主任曰く、

「物語の未来と過去をコンセプトにしたらしいの」

星名医院長が直々にデザインしたとのこと…
なんつー者をデザインしたんだ!
雇われの身…仕方なく着ますよ。

「水分はこまめに摂りなよ」

さすが医者。
初夏とはいえ天候次第では着ぐるみの中は40℃以上になることもあるらしい。

「わかりました」

「見守ってる」と苦笑いしてテントを出て行った。



「葛城さん、可哀想」
「たまには良いんじゃない?チヤホヤされてるし」
「塩谷先生に青山先生でしょ?」

これが同じ職場の同僚じゃなければ…許してない。
勝手に言ってれば良い。
陰口なんて“美人”に付き物!やる気の養分!

「完璧にこなしてやる」

闘志むき出しで着ぐるみを手に取る。
今日の気温は30℃に近い。

「あちらで着替えお願いしまーす」

早く着ろと言わんばかりの声に「はい」と一応返事して着ぐるみに足を通した。



「キーック」

(痛いつーの!)

着ぐるみ越しから伝わる子供達の容赦ない殴る蹴るの暴行に耐え続ける

(休憩です)

係の職員に小声で言われまだ遊び足りさなそうな子供達に手を振り休憩入る。

テントの中に入った瞬間、頭の星をスポッと取りタオルで汗を拭く。
さすがに太陽の下で2時間着ぐるみは意識が朦朧とする。

「ビール飲みたい…」

誰も居ない休憩室でひっそり口にしてテーブルに置かれたスポーツドリンクを手にした。

「熱ッ」

ホットのスポーツドリンク?
何で?!
まさか…

「やられた…」

妬みの恩恵がこれ。

「これもだし」

他の飲み物も熱い。
買いに行くには着ぐるみを全部脱いで…時間が足りない。

「無理だよね」

吹き出る汗をタオルで拭きながら時計をみる。
後一時間これを着ることになってる。

「休憩終わりです」

呼びにきた職員に「はい」と返事をして星型の頭をかぶった。

暑くてたまらない。
やりとげたら犯人探してボコボコにして…これを着せてやる!

中では殺意を燃やしてる
外では子供達からの暴行と「可愛くなーい」と言葉の無差別攻撃に耐え続ける。

“可愛くない”は私にとって新鮮な言葉。

「おーい!変な顏見せろよー」

(…こう言う子居るよね)

悪ガキがこんな事を言い出すから短い手を交差させて「無理」と意思表示。

「なんだよーケチ!!少しくらい良いじゃん!!」

こんな状況の時に限って3人の男の子と1人の女の子に絡まれる。

(さて、どうしよう)

ふざけた態度でどうにかしようと試みるけど離れてくれず裾を引っ張ったり腕を掴まれ引っ張られたり。

(ヤバい…余計な体力を)

着ぐるみの中で何度もジタバタと手足を動かして拒否する。

「顔みせろー」

中でも体格の良い男の子が私に体当たりをして来てよろけそうになりながらも必死に耐え続ける。

(…限界。頭が割れそうに痛い。それに意識が…)

ドン!!!!

2人掛りの体当たりに耐えきれず後ろに倒れると思った瞬間、

「おい。これは可愛がる物だろ?」

誰かに支えられた。

「大丈夫か?」

(…青山さん?)