縁が無かったから離婚したのに(3K)元旦那と周りがうるさくて困ってます。優秀脳外科医の頭の中をのぞきたい

「これどうすんのよ。手術して」

キスマークで手術とか普通思わないだろ?
付けた本人に頼むとか可愛い過ぎて離したくない。

「紅、今日は初夜だな」

一緒に寝た事がなかったから初めて寝るだけの夜って意味。
決してこれ以上を今は望んでない。

なのに…

みるみる顏どころか首まで赤くなってる。

「そっそそ、無理!ここ実家だし!初めてだし!ないないないない!!!」

分かってはいたけど嬉しいカミングアウトにぎゅっと抱きしめる腕に力を込めた。

「一緒に寝るだけだって。それも初夜だろ?紅、何か期待した?」

やっぱり意地悪を言いたくなる。
紅の全部を貰うのは後でも良い。
まず今日は…

「期待してないわよ!!!京祐のバカ!」

このお姫様と一緒に寝る交渉をしよう。





事故後からの身の回りがホントにおかしい。
異世界では無いけど非現実世界にいる気分。

だいたい一番おかしいのは…

「紅ありがとう」

母に無理矢理持って行かされたお弁当を渡して周りを確認する。
こう言う時は連絡先を知ってて良かった。

「今後は本当に近寄らないで」

酔っぱらってキスまでされて一緒に寝るはめになった。
婚約者がいる京祐にとってこれは“浮気”!
そんなのに巻き込まれたくない。

「私そんな簡単な女じゃないの!分かった?これで最後!」

かっこよく決めたはずがただの脅しみたいに。

「考えとく。じゃあまた」
「または無い!」

人の話は聞かず脳外科病棟の裏手から先に京祐が出て行った。

「勘弁してよ…これ以上は恨み買いたくない」

最近、一部女性の職員からの妬みが凄い。
それは全部青山さんのせいだ。

「怖い…寒気する。これって何かの」

予兆でした。
心做しか皆んなそわそわと今は今かと部長が来るのを待ってる。

「お疲れ様。皆んな第3ミーティングルームに集合してくれ」

部長の声に皆んな肩を落としたのを見逃さなかった。

【親子ふれあいイベント】と書かれた印刷物がミーティングルームに置かれてる。
今回行われるこのイベントの担当を決めるらしい。

「皆んな揃ったか~?」

部長は満面の笑みを浮かべて席に座った。

「本当に嫌なんだけど…」
「あれになったら地獄」

1日だけのイベントなのに皆んなの顏が必死に見える。

「俺、この間小児科でそれやったんで今回は良いですかー?」

勤務2年目の鈴木くんが手を挙げた。

「自分だけずるい…」
「鈴木最低ー」

周りのヤジにもめげず手は挙げたまま。

「そうだな!お前はくじ運悪いから当たりを引く可能性高い。はははっ」

部長はベルトに乗せたお腹と顎下のお肉をゆさゆさと揺らす

「じゃあ誰から引くかな…初めて参加の葛城さんからにするか」

これはあれだ、あれに似てる

“黒ひげ危機一髪”

部長は目の前にニコニコと笑いながら抽選箱と書いた箱を突き出した。

ゴクリ…
大の大人達が生唾を飲み込む。
私には生唾飲む意味が分からない。

「はい…」

ゆっくり箱に手を入れる。
触って紙の感触を味わうけど、どれが何かなんて分からない。

(…まあ考えたって無駄!勢い大事!)

これ!!

三角に折られた紙を部長に渡すとゆっくりと開いて行く。

「葛城さん大当たりー!おめでとう!1発で当たりを引いた彼女に拍手!!」

一発目なんですが…
開かれた紙を確認すると赤文字で当確と書いてある。

(選挙じゃないつーの!!)

「おめでとう!」

部長の“おめでとう”コールを皮切りに皆んな喜びで湧き上がる。

「くじ運…最悪ね…」

加藤主任が役割を教えてくれてがっくりと肩を落とした。