公爵様の偏愛〜婚約破棄を目指して記憶喪失のふりをした私を年下公爵様は逃がさない〜




 そうしてこの記憶喪失のふりで婚約破棄してもらおう作戦が決行された。
 発案者が私とマリアのため、少し計画内容に甘い部分があるような気もするが……


 最初はマリアが読んでいた物語のように、野蛮な性格になろうかと思ったのだが、「婚約解消された後の嫁ぎ先がなくなるからやめた方がいい」とマリアに泣きつかれてしまい、渋々、記憶喪失部分だけ採用させてもらった。


(こういうのは思い切りやった方がいいと思ったのだけど…)


 まあ、でもいいだろう。


 元々、全てが不釣り合いな婚約だった。
 それにルーカス本人からも、アーレンベルク夫妻からもよくは思われていない。だからきっかけは何だっていいのだ。


 向こうから婚約解消を切り出しやすくなる理由をつくれば、すぐにでも婚約は解消されるはずだ。


 ───そう思っていたのだけど。