公爵様の偏愛〜婚約破棄を目指して記憶喪失のふりをした私を年下公爵様は逃がさない〜



「やっぱりすごいのね、魔術って。私にはまるで才能がないから羨ましいわ。あーあ、私もルークのように魔術が使えればよかったのに…」

「うーん? でも、魔術師って危険な目に遭うこともあるから、俺はエルーシアに魔術の才がなくてよかったって思うけど」

「危険な目…」

 そう言われてみれば、たまにルーカスが生傷をつくっているのも見たことがある。確かに、希少価値の高い魔術師を利用しようと悪いことをする者も多いと聞く。


(そういえば、魔術師の仕事にも危険なものが沢山あるって、お父様も言っていたな…)


「そんな不安そうな顔をしないで。大丈夫だよ、俺、()()()()は得意だから」


 壊すことが得意だと、危険な目に遭わないのだろうか? 私が頭の中に疑問符を浮かべていれば、ルーカスはにこにこと笑いながら「エルーシアは知らなくていいよ」と言った。